始まり
第05話 鳥と猫と空気と
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白音との思い出したようで懐かしそうに喜んでいた。
五年ほど前にご両親が白音と黒歌を保護して半年という期間を一緒に過ごしていたらしい。
ただ、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと言い残して姿を消してしまった。
「大切な思い出のはずなのに忘れてしまっていましたけど、ね」
と、申し訳なさそうに隣に座る小猫の頭を撫でる。
「……にぁあ」
小猫もそれを嫌がることなく受け入れてされるがままになっている。
心を許せる相手を見つけることができたおかげか、普段私達にも見せないほどリラックスしている。
ちょっと、悔しいわね。
とはいえ……
「……」
我慢するように二人を見つめるフェニックス卿の令嬢。
先程から一言も喋らずぷるぷる震えジーッと。
あいさつをした時から私も同じ女として彼女が彼に好意を寄せていることにすぐに気づいていた。
だからこそ言えるわ、もう長くは持たないと。
「あ、秋人さま!」
「ムッ……」
小猫を撫でていた来ヶ谷くんの左手を腕ごと引っ張り、抱き付いた。
「れ、レイヴェル?」
どこかイントネーションが変な彼の声。
腕に感じる女性独特の軟らかさに戸惑っているのでしょう。
……案外初なのかしら
「ッ〜〜〜!」
彼女も彼女でやった後に恥ずかしくなったようで顔をこれでもかというくらい赤くさせながらも、腕を放そうとはしない。
小猫は……初めて見るわね、あの子の怒った顔なんて。
一言で言うなら、兄を盗られた妹の心情っていうのが一番合ってるかしら。
「……放して。秋人くん戸惑ってる」
「い、嫌ですわ! そう言うのなら小猫さんも秋人さまから離れたらどうですの?」
二人とも互いに引かずに睨みあっている。
レイヴェルさんは更に腕を抱き寄せる。
それに対抗して小猫も来ヶ谷君の腰に腕を回してレイヴェルさんを睨み付ける。
「レイヴェルも白音も仲がいいな」
「違う……!」「違いますわ!」
……息ぴったりね。
来ヶ谷君も苦笑してるから同じことを思っているみたいね。
とはいえ、そんな二人を微笑ましそうに見ている。
来ヶ谷君、小猫、レイヴェルさんの三人で一つの空間ができた。
……私、いつの間にか空気みたいね。
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