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占術師速水丈太郎 五つの港で
第九章
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して述べるのだった。
「ここから呉に行きたいのですが」
「そうですか。それでは小船の用意を」
「いえ、それはいいです」
 それはいいというのであった。
「ただあちらに案内してくれる人を用意してくれれば」
「それだけでいいのですか」
「はい、そちらの手配をお願いできるでしょうか」
「わかりました、それでは」
 こうして彼は一旦実松との話を終えた。そうして校長室を出るとまずは外を見た。そこからは五階建てのやはり赤煉瓦の建物が白い階段の上に見える。そこが幹部候補生学校の学生達の隊舎である。
 そして彼が今いる廊下は白く左右に長い。その渡り廊下の趣きも日本ではなくイギリスのそれを思わせる。白くそれと共に開けている。彼はそうしたものを見てまずは感慨に耽った。
「歴史ですかね」
 ここには確かに歴史がある。海軍の、そして近代日本の歴史がだ。その息吹を感じながら今は己のやるべきことを果たすのであった。
 また運命の輪のカードを出して青い渦の中に入る。そうして今度現れたのは丁度停泊している潜水艦の正面であった。黒いその姿が目に入った。

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