アインクラッド編
その日、言うなれば――
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だが意思を固めたアスカにとってその程度の事、意思を弱めるほどではなかった。
手早くウインドウを操作してメッセージを起動。迷宮区最短ルートに位置する門の前で待機させているメンバーの一人に自分を置いて先に行くことと、今日は指揮権を預ける胸の文面を送る。
今日一緒に行動する予定だった団員はかなりの手練れ揃いだ。指揮することに慣れた人間がいないのは多少不安だが、間違っても迷宮区低層で負けるような輩はいない。
すぐに了解しました、と書かれたメールが返ってくる。ウインドウを閉じて、アスカはキリトの隣に寝転がった。
――ああ。
キリトの言うように、柔らかな芝生に仰向けに倒れ込むと、少し前まで抵抗を覚えていたのが馬鹿らしくなるほど、心地よかった。
同時に、先ほどまでアスカの脳内を埋め尽くしていた煩雑な思考が霧散して、薄れ、消えていく。
今こうしていることが正しいのか、キリトの言葉通りに進むべきなのか、それとも今まで通り《結城明日香》として戦うべきなのか。
考えることはたくさんあり、考えるべきであるはずなのに、限界まで酷使されていた脳が遅まきながら休息を求めているように、思考をせき止める。
――寝てから、考えればいいか。
いつになく、《結城明日香らしからぬ》投げやりな、それでいて刹那的に今を楽しんでいるキリトを真似たような結論に至り、アスカは意識を手放した。
それから八時間、夢のユの字も知らぬとはこの事よ、と表現するに相応しいほど豪快な爆睡状態に耽り、起きるまでの間呆れながらも笑顔で見守ってくれていたキリトに対してアスカがどのような感情を抱いたか……いや、抱いていたことを認めたか、そしてこの世界をどう生き抜く道を選んだか、そんなこと口にするだけ野暮というものであろう。
しかし、この日、この瞬間のことを表現するなら、きっと――
――アスカにとって、二人にとっての人生の転換点、だったのだろう。
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