アインクラッド編
その日、言うなれば――
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団員共にいつも通り、レベリング、そして一日でも早いこのデスゲームからの脱出のため、最前線の迷宮区に向かおうとしていたアスカの目にその黒衣の少女の姿が映ったのはただの偶然だった。
「ん……アスカ。どうした?」
「今日は昼寝か?」
そして、団員たちを置いて一人で声をかけに来てしまったのも、本当にただの気紛れだった。
いや、本心に気付きながらも無視していたといったほうが適切か。
第五十九層主街区からフィールドまでの道のりに広がる草原。その広大な芝生にぽつんと生えている木の下でキリトは仰向けに寝転がっていた。
アスカは気持ちよさそうに横になっているキリトを見やる。
《木陰の下で眠る少女》といえば可愛げのあるように聞こえるが、実際は《全身真っ黒で背中に大ぶりな剣を背負う激強ソロプレイヤー》なのだから、雰囲気も何もない。……別にそんなことを期待して声をかけたのではないが。
「こんなにいい天気だからな。ジメジメした迷宮区に潜る気が失せたよ」
「……まあ、確かにな」
さっと手を翳しながら空を仰ぎ見る。
晴れ渡る青い空は存在しないが、陽光が――といってもこちらも実際に太陽が存在する訳ではない――照り付けており、心地いい温かさだ。
それに今日は風速、湿度、小虫の出現率まで含め天候パラメーターは最高だった。
春先であることを考慮しても、これほど過ごしやすい天気である日は今まで両手の指で数える程度しかなかっただろう。
柔らかな芝生の中で暖かなそよ風を感じながら微睡みながら過ごすのは確かに、気持ちよさそうだった。
「じゃあ、アスカも寝ていくか?」
だが、アスカはその提案に首を振った。
「団員達を待たせて俺一人寝ている訳にもいかないだろ」
今とて、キリトを叱ってくるなどと言って声をかけに来ているのだ。
アスカはこの一年半もの付き合いで目の前の少女のことをある程度は理解しているつもりで、こうして自分のしたいことをすぐに行動に移すことも知っている。きっと、アスカが色々と言ったところでのらりくらりと話を逸らされて終わるだろう。
それに、今さらキリトの攻略への貢献具合に疑問を覚えることも無い。下手をすればたった一人で攻略組ギルド以上のハイペースでマッピングを進めているのだ。それをアルゴ経由で無料提供されるおかげでアスカ達も安全な狩りに挑めるのだ。重々承知している。
だから、アスカはこうして会話しに来た理由を自分でもよく分かっていなかった。
「アスカは十分頑張ってると思うけどな。お気楽ソロプレイヤーとしては感謝しているよ」
苦笑しながらそう言うキリト。
「……」
それに、胸の奥で嫌な感情が這いずり回る。
別に、アスカは誰かのため、攻略に
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