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豹頭王異伝
暁闇
マリウスの歌
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みを捨てよ』 
 キタイを蹂躙する闇の力、暗黒の人竜族を統べる冷酷王の心話音声が響き渡った。
 明日への希望を持つ事も許さぬ異世界の種族、精神集合体の宣告が心を凍らせる。
 闇黒の波動が精神を塗り潰し、多彩に煌く豊かな感情を悉く凍結させ尽くす。

 不安、恐怖、利己主義、怨嗟、憤怒、妬み。
 未練、憎悪、妄執、悔恨、卑怯、嫉み。
 己の内部に存在する事を隠さずにはいられない、醜い感情達の集積物。
 心の闇の正体、己が産み出した事を認めず否定せずにはいられない負の感情。
 目を背けたくなる醜い感情、暗い心波の渦が湧き上がった。

 精神的怪物《イド》が心の奥底に生じ、自己増殖を繰り返して心を隅々まで浸蝕する。
 自分自身から隠す為に、自ら創造する自己弁護の心理と総てを糊塗する暗幕《カーテン》。
 心の暗幕が発生する過程、隠している《もの》の正体が明らかにされる。
 見る事を拒否された感情達は、心の外に出る事も叶わずに凍り付く。
 消滅するのではなく、心の内部に存在し続ける。

 心が、重くなる。
 存在を否定された感情達の重みで、心が動けなくなる。
 心が、閉ざされて行く。
 絶望に染まりかけていた心に、マリウスの優しい歌声が語り掛けた。
 君は、1人じゃない。
 僕が、傍に居る。

 僕は決して、君を見捨てはしない。
 何時でも君の傍に、寄り添っている。
 歌が、浸透する。
 暗幕《カーテン》を透過して、温もりが伝わる。
 氷が、少し、溶けた。

 暖かい、歌声に。
 氷が、少し、融ける。
 凍り付いていた感情が、解ける。
 感情が、甦る。
 マリウスの歌声に癒され、過去の感情が昇華する。

 氷が熔けた分だけ、重さが減る。
 心の重さが減り、暗幕《カーテン》が揺らぐ。
 歌が、浸透する。
 揺らいだ暗幕《カーテン》を透過し、更に温もりが伝わる。
 氷が更に溶け、感情が昇華する。
 心が少し、軽くなる。

 暗幕《カーテン》が、揺らぐ。
 温もりが、伝わる。
 氷が溶け、感情が昇華する。
 心の重量《バランス》が、変化する。
 暗闇の幕に、隙間が生じる。

 隙間から、光が差し込む。
 優しい歌声が光となり、隠されていた感情達に届く。
 解凍、溶融、昇華。
 凍結されていた感情達が、溢れ出す。
 外へと、流れて行く。

 心が更に、軽くなる。
 闇色の幕が、翻る。
 心の変化に耐え切れず、闇が揺らぐ。
 光が、更に流れ込む。

 闇が塗り固めた漆黒の拘束衣、心の幕《カーテン》の陰に。
 光と温もりが、届く。
 解凍、溶融、昇華。
 存在を認められた感情達が、光に変換される。

 絶望に染まった心を優しく包み、希望を保ち続ける勇気と
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