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豹頭王異伝
転換
煙とパイプ亭
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た、戻って来れるんでしょう? なら、みんな、一緒の方が、良いと思うんです。

 ダンも、オリー母さんも、ゴダロ父さんも一緒に行っちゃ駄目ですか?
 アルセイスに行った事は無いけど、カメロン様の近くなら安心だし。
 小さくてもいいから家を借りて、一緒にお店をやれたらいいなぁって思うんです」
 カメロンは新都に向け、再び馬を駆る事となった。


 安堵した事に初産直後の王妃は信頼を寄せる義父、密かに慕う快男子の帰りを待っていた。
 出産直後のミアイル王子を片時も離そうとせず、乳を与えている内に心が揺らいだらしい。
 赤子が泣き止まぬと対処する術を持たぬ新米の母親、アムネリスは狼狽の極に達した。
 光の公女も背に腹は代えられず、遠去けていた女官達へ助けを求める事も辞さなかった。
 モンゴール出身の女官長アイラニア、侍女メア達が狂喜した事は言うまでも無い。

 彼女達は騒ぎ立てながら赤子の世話を焼き、ゴーラ王妃に愛児が誕生した事実を吹聴して廻った。
 宰相不在の王宮に、口止めする者は誰もおらぬ。
 王子の誕生は瞬く間に、ゴーラ全土へ知れ渡るが。
 ドリアン、改め、ミアイル王子の誕生を囁く声と尾鰭を付けた噂の数々は。
 新生ゴーラ王国全土に重大な衝撃、思い懸けぬ波及効果をもたらす事となった。

「旧ユラニアを滅ぼし、モンゴールを血の海に沈め、戦上手の簒奪者が創り上げた新興勢力。
 神聖ゴーラ帝国ならぬ新生ゴーラ王国は一代限りの幻、泡沫の夢と消えずに続いて行くのだ…」
 言葉にすれば其の様な想いが新生ゴーラ王国、旧ユラニア領の全域を駆け巡った。
 王子の誕生を囁く声が巷に溢れ、国王夫妻と義父の肖像画が再び脚光を浴び新都の各地に掲示。
 人々は美男美女の新王家を戴いた歓喜の瞬間を想い起こし、改めて新国家の発足を実感。
 それは新生ゴーラ王国の曙、ユラニア大公家の残党も復活を諦めた最後の日かもしれなかった。


 アムネリスの無事を確認した直後、カメロンは流石に無理が祟り寝込む事になった。
「どうしたの、カメロン! こんなに憔悴して、何があったのよ!!」
 アムネリスにもそう言われた位、酷い有様ではあったのだ。
「何も心配要らない、トーラスに行って来た。
 懇意にしている一家が此処に来て、赤ん坊の面倒を一緒に見てくれる事になったよ」
 そう告げて早々に退散しても、アムネリスでさえ愚図らなかった。

 抜け目の無い宰相は鏡を見て一計を案じ、不在を巧みに隠蔽。
 面会を望む数多の人々に和タルザンと区切り、寝台に仰臥した儘で釈明。
「流行り病でえらく憔悴しているので、更に数日間の休養を取らねばならない」
 数日前から寝込んでいた、漸く快方に向かい始めたと関係者全員に納得させた。

 奇妙な事に以前から
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