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第二の基点
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かなんだろう。
…私は、どうしたいんだろう…。
何もかも、わからなくなってしまった。
私は、また希望を持とうとしているのだろうか…。
何度も裏切られて、もう2度と、こんな事はしない、そう、固く決めた筈なのに…」
無意識の緊張で張り詰めた筋肉が緩み、カメロンは大きく息を吐いたが。
己を叱咤し、慎重に気配を探る。
「アムネリス、ひとつだけ、頼みがある。
俺を家族だとおもってくれるのなら、子供の名付け親にさせてくれないか。
ドリアンという名は、あまりにも可哀想だ。
お前も、お前の赤子も、俺の、大切な家族なのだから」
沈黙が続き、カメロンは限界まで忍耐力を試される事となったが。
数タルザン後、暗闇に覆われた部屋の奥から再び声が響いた。
「…ありがとう、カメロン。
貴方なら、何と名付けるのかしら…」
煙とパイプ亭を訪れた際、トーラスの下町に暮らす人々から様々な噂話を聞いた。
モンゴール建国を果たした英雄ウラド、大公家と公女将軍を襲った悲劇の数々を。
アムネリスの心に希望の明りを灯し、凝り固まった憎悪を解く可能性を秘める名前は何か。
カメロンは己の推定に確信を持てず、沿海州の船乗り達が信奉する神に祈った。
ドライドンよ、御加護を。
「ミアイル、と」
「おい、ブラン!
トーラスへ急用が出来た、留守を頼む。
俺が戻るまで、急病で誰にも会わんと言われた事にしとけ。
周りが騒ぎ立てても、面会謝絶で押し通せ」
「ちょ、ちょっと、おやじさん!
一体、どういうこってすか?
何が何だか、さっぱり分かりませんってば!
私にも理解出来る様に、落ち着いて話してくださいよ!!」
気心の知れた海の兄弟が珍しくも、普段は決して出さぬであろう狼狽した声を挙げる。
カメロンは己の振る舞いを自覚し、思わず苦笑。
表情を綻ばせ、言葉を足した。
「トーラスに、煙とパイプ亭って居酒屋があったろう?
グイン陛下と、お会いした所だよ。
アムネリスが出産したんだが、精神的に不安定で何を仕出かすかわからん。
あの一家がいてくれりゃあ、落ち着くだろう。
世継ぎの王子様の誕生は目出度い限りだが、あまり彼方此方に知られたかねぇ話だからな。
回りくどい手間を掛けずに俺が直接行って、話を付けちまう方が早い」
「アムネリス様に、御子が?
でも、今、おやじさんが、イシュタールを空けちまって、大丈夫ですかね?
他の連中にゃ、何も決められなくなっちまいませんか。
クムが攻めて来たりでもしたら、危いんと違いますかね?」
海の快男子は、実直な腹心の情勢判断を尊重。
好意的な微笑を見せ、決断を下す。
「タリクに、
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