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第二の基点
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パロ聖王家の予知姫にも優るとも劣らぬ美貌を備え、大輪の花と讃えられた豪華な金髪の女性。
モンゴール大公家の後継者として苦難の道を歩み、ゴーラ王妃の座を射止めた光の公女アムネリス。
イシュトヴァーンに裏切られた彼女は絶望の淵に佇み、自力で産んだ赤子の鳴き声に耳を傾けていたが。
エメラルド色の瞳を閉ざし、最期の、終末の刻を迎えようとしていた。
「ねえ、カメロン様…貴方は…私の事を…少しは…美しいと思っていてくれた?
…僅かにでも、愛おしいと…」
赤子の泣き声が弱く、小さくなった気がする。
カメロンの裡に動物的な直感、野生の勘が閃いた。
「…美人、なのになぁ。
アムネリス、俺は、間違ってたかも知れん。
お前は、俺の大切な家族だ。
なのに俺は何時もお前を大公様、アムネリス様だのと他人扱いしていたんだな」
沿海州で最も尊敬される提督は虚飾を捨て、率直に語り始める。
「俺は海軍提督にまで取り立ててくれた恩人より、イシュトを選んだ。
沿海州海軍を蝕む陰謀を暴く事もせず、ヴァラキア公を見捨てた裏切り者だ。
トーラスの裁判でも、亡霊に逆上して宰相を斬ったのは俺だ。
お前がイシュトを憎むのは尤もだが、本当に憎まれなきゃならんのは俺の方なんだよ。
アムネリスには1人の女性として、幸せになって欲しいと俺は思うんだが。
モンゴール大公家の体面に囚われ過ぎて、自ら不幸を招いている様に思えるよ」
感情を激変させ癇癪を破裂させる小さい子供、心理的に不安定な世界を滅ぼす運命の孤児。
万華鏡の如く豹変する最愛の悪魔、イシュトヴァーンに語り掛ける時の様に。
シルヴィアの理不尽な暴言に耐える豹頭王の如く、幼児を宥める様に優しく続ける。
「ノスフェラスの戦いで、マルス伯爵が亡くなった時も同じだ。
イシュトがお前を裏切ったんじゃない、あれはグインが授けた計略だったんだ」
以前、イシュトヴァーンから聞いた。
グインに申し訳無い、と思うが已むを得ない。
心の内で詫び、アムネリスを刺激せぬ様に表現を選ぶ。
「強大な軍勢に追い詰められ、生き残る為には行動しなければならなかった。
イシュトは自分の意志で、アムネリスを騙したんじゃない。
グインの計略に従って動いた端役、脇役の一人に過ぎないと思うんだが」
反応は、無い。
初産の直後で気の昂っている光の公女、アムネリスを刺激せぬ様に。
一言一言を区切りながら、ゆっくりと口にする。
寝台は暗く、様子を見て取る事が出来ぬ。
カメロンは焦る心を懸命に抑え、言葉を継いだ。
「ヴラド大公は、無辜の民が幸せに暮らして行ける様に、そう、願っていたんだろう。
アムネリスが生まれる前、モンゴール地方は誰も
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