閑話
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ファミリーの仲間達と箱根に行った翌日の早朝。東の空が少しだけ白んできた時間に、千李は川神院の舞台上で静かに型の鍛錬を行っていた。
その動きは流麗であり豪然、堅実さを持ちながらも彼女の動きには彼女らしさがあふれていた。
するとそこへ、
「ほう……今朝は随分と早いのう千李」
鉄心が気配もなく表れた。
「ジジイ、いたならもっと早く声かけたらどうなのよ」
脱力をしながら千李は言うものの、鉄心は笑っている。
「いやお前が久々にこんなに朝早くから鍛錬しておるのでな。邪魔をしては悪いと思うての」
「別に邪魔でもなんでもないし」
「そうか。では今度からもっと早く声をかけようとするかのう」
未だに笑みを戻さずに言う鉄心に対し、千李は溜息交じりに問う。
「そんなこと言うためにわざわざ来たわけじゃないんでしょ?」
彼女の問いに、鉄心は神妙な面持ちになると静かに告げる。
「やはりバレてしもうたのう……一ヶ月のことわかっておるな?」
「ええもちろん。ジジイと戦う日でしょう?」
片手を腰に当てながら嘆息交じりに千李は答える。口ぶりからは、何を今更、といった雰囲気が滲み出ている。
「うむ。まぁそれだけなんじゃが、心配はなさそうじゃのう」
「あったりまえでしょうが、それぐらいはちゃんと覚えてるっての。んで、それがどうかした?」
「どうかしたわけではない、予定どうりやることは確かじゃが。一応確認でな……ワシに勝ってもすぐに総代は継がなくて本当に良いのか?」
鉄心は千李を見据える。
千李はある約束を交わしていた、それは千李が十代で鉄心を越えてしまった時は千李が二十歳を迎えるまで総代は代わらないというものだった。
実際のところ、鉄心自身まだまだ現役なので代わる必要もないかと思うのだが鉄心が、代われと言うので代わることとなったのだ。
だが二十歳前は色々と遊びたいこともあると千李が述べたところ、本格的に世代交代するのは千李の二十歳の誕生日の時となった。
……そういやそんな約束してたっけ。
忘れかけていた記憶を呼び覚ましながら、千李は鉄心に向き直り言い切った。
「ええ、もちろん。私が二十歳になるまでは交代しない、というか交代したくない」
「まぁそれもどうかとは思うが……。いいじゃろう、ではそういうことでな。じきに朝食じゃシャワーでも浴びて汗を流して来い」
鉄心はそれだけ告げると踵を返し、本堂のほうに姿を消した。一方残された千李は、
「ふむ、とりあえずあと少し体を動かしたら瑠奈を起こしに行きますか」
鉄心と戦う時が迫っていると言うのに、緊張した様子は微塵も感じられなかった。
時間は経っ
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