第一章 [ 胎 動 ]
十三話 帝都防衛戦 後編
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た拳から放たれる不可視の破壊力。
僕は身を守るため蛇達を壁のように配置する。灼熱の蛇達は放たれた脅威を噛み砕こうとするが次々に粉砕されていく。
徐々に迫る脅威――――
抗う蛇達――――
そして遂にその一撃は――――
僕を貫いた。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
紅髪の心に一つの感情が湧き上がっていた。
それは――――“歓喜”
つまらない闘争の日々の中でこんなにも心躍る戦いは無かった。勝つのが当たり前になっていた自分が今、初めて勝利の為に全力を掛けている。正に捨て身だ、奴の攻撃は間違いなく俺の命に迫っている。なのに――――存在の危機に瀕しているというのに楽しくてしかたがない。
礼を言うぞ人間よ、俺は初めて敵に全力を向けることができた。そしてこの一撃を持って俺の勝利とする。
全身全霊を込めた一撃を放つ。奴の蛇が抗おうと牙を立てるがその程度では止まらん。そして俺の一撃は奴を打ちのめし吹き飛ばしていく。
終わりだ。
不意に歓喜が渦巻いていた心が急激に冷めていく。これでまたつまらない日々を過ごさねばならないのか。そんな悲観に駆られる。
突如、無数の雷撃が紅髪を貫く。
「ガアア!!!な、なんだ!!」
頭上に視線を向けるとそこにはさらに無数の雷の蛇達が迫っていた。完全に油断をしていた紅髪は打ち貫かれマグマの海に叩き落とされた。その海の中でさらに灼熱の蛇達に喰い付かれる。
「ウオオォォォォォ!!!!!!!」
絶対的な死の圧力。紅髪は能力を全開にする事でそれに抗ったが次々に体の一部が死んでいく。眼も腕も足も焼け落ちたが紅髪はまだ生きていた。負けぬ、死なぬ、いままで一度も感じた事のない感情が紅髪を支配していた。
生への渇望。
命在る者には当たり前の、しかし自分には無縁の物だと思っていた。それが今はどうだ、必死に生にしがみ付いている。そんな自分に驚きを感じていた紅髪を襲っていた死の圧力が唐突に消えた。何が起こったのか、すぐに解った。確か奴の能力は少し時間が経つと消えていた。つまりこの力も他と同じなのだろう。
惜しかったな。
心の中で紅髪はそう呟いた。少しずつ体が再生していき眼も再生してきたのだろう光を感じる。そして視界が戻る瞬間、自分の胸を何かが貫いた。
完全に再生した瞳が捉えたのは全身をズタズタにされた奴が自分の胸に刃を突き立てている光景だった。なるほど最後まで俺に噛み付いてきたか。だが勝負は決まった、こんな物では俺を殺せはしない。まさに最後の悪足掻き。
そんな事を思った紅髪は不意に違和感を覚える。傷の再生が止まっているのだ。それだけではない、自分の体から力が抜けていく。
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