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東方虚空伝
第一章   [ 胎 動 ]
十二話 帝都防衛戦 前編
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完了した。お前もすぐに来い!」

 通信が出来るという事は奴をなんとか出来たと思い庵は虚空にそう伝えた。しかし虚空からの返答は予想外の物だった――――いやもしくは予想の範囲内だったのかもしれない。

『…すいま…せん。…もうちょっと…掛かりそう…なんで…先に…行ってて…ください…』

「そんな事出来る訳ねーだろッ!」

 紅が横から叫ぶ。庵も同じ気持ちだった――――だが全隊員を預かる者として決断を下す。奴の足止めを命じたあの瞬間から覚悟していた事だ。

「…わかった。何か伝言はあるか?」

「!?庵さん!何言ってんだよ!」

 紅が庵の襟を掴み上げる。それに構わず庵は虚空の返信を待った。

『……ちょっ…と遅れる…けど…怒…らない…でね、…と…伝えて…くださ…い』

「確かに伝える」

 それだけ答えると通信を切る。

「炸裂弾でこの通路を破壊する。総員退避!」

「ふざけんじゃねーッ!虚空を見捨てんのかよ!あんたの弟子だろーがッ!」

「あぁそうだ!俺は総隊長としてあいつを捨て駒にした!!虚空を犠牲にした以上絶対に脱出を成功さなきゃいけないんだよ!!文句はあとで聞く!さっさと行動しろ!」

 庵の剣幕に押されたのかそれとも覚悟に押されたのかは解らないが紅は引き下がった。退避していく隊員達の背後でシャトルに続く唯一の通路は爆発音と共に閉ざされた。


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 コックピットの後部座席に座り庵は最後の指示を出す。

「カウントダウンはいらん……すぐに発進しろ」

「…了解しました」

 シャトルがゆっくりと加速していく。薄暗い通路の先に光が見えてきた。そして通路を抜け空を目指して飛び立つ庵達の目に飛び込んできたのは雷を伴うどす黒い黒雲だった。
 さっきまでは嫌味な位の快晴だったはず。そして地上を映すモニターに出てきたのは真っ赤に染まる大地だった。
 何だこれは?そんな疑問を抱いた瞬間脳裏に虚空の姿が浮かぶ。まさか、お前はまだ戦っているのか?諦めずに抗っているのか?
 そんな事を思った庵の中に言いようの無い感情の波が荒れ狂う。唐突に館内通信用のマイクを取り、

「全員そのままでいい…七枷虚空に敬礼!」

 シャトルの中で隊員達がもう会えぬ仲間に敬意を持って別れを告げた。地上への後悔だけを残しシャトルは月を目指した。

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