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東方虚空伝
第一章   [ 胎 動 ]
十話 勝利をこの手に!
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ろうただの不意打ちなら直前に奴に気付かれてしまう。だから注意を引き尚且つ庵さんの全速力+僕の引力による牽引で速度をあげた。
 だが庵さんの攻撃はまだ終わっていない。

「今までの礼だ!!受け取れ!!」

 そう言った瞬間庵さんの剣の刃が裂き乱れる。。まるで急激に成長する植物みたいに紅髪を体内からズタズタに引き裂いた。「刃を自由自在に操る程度の能力」庵さんの力だ。

「ゴッ!!ガアアァァァァァーーーー!!!」

 さすがの奴も五体をバラバラにされて苦しんでいた。というかこれでも死なないのか。でもこのあたりも実は想定内だった。できうる限りの最悪を想定していたから。
 そしてこれで計画も最終段階だ。

「庵さん急いで離れて!」

「わかった!虚空決めちまえ!」

 そう言い残し庵さんは全速力で離れていく。それを確認して僕は“3本目”の剣を抜いた。

怠惰 (ベルフェゴール)!」

 そう唱えると僕の手に刃渡り一メートル程刃幅四センチの両刃の大剣、クレイモアが現れる。あの夢を見た後使える様になっていた新しい力。
 剣の能力を開放すると同時に周囲の重量感が増した。
 この剣の能力は一定空間の重力加算。今は3倍の重力に加算した。
 その能力範囲を僕を中心に半径50メートルに定め更に加算する。僕自身が能力圏内に居るが能力の影響を受けていない。どうやら自分自身には能力は作用しないらしい。
 重力50倍の圧力が掛かると同時に紅髪がいる所を中心に地面に大穴が開いた。
 これは事前にここに開けておいた穴だ。深さは100メートルはある。その穴に紅髪が堕ちて行く。
 50倍の重力で100メートル落下すれば奴も粉々だろう。だけどこれだけでは終わらない。
 僕は穴の中心辺りの上空に飛び待機する。
 そして一瞬後、紅の能力により僕のいた位置に40メートルを越す大岩が出現した。大岩は重力に引っ張られ物凄い勢いで穴の底に落ちていく。
 穴を塞ぎつつ底にいる紅髪を押し潰す大岩。大岩が完全に落下したのを確認すると僕は能力を解いた。同時に数人の隊員達が穴の方に向かって行く。封印処理をするためだ。
 今回の作戦は奴を倒すのが目的じゃない。どうすれば倒せるか解らないだからできるだけ戦いは避けたかった。殺せるかどうか解らない以上封印するしかない。そう思っていた時あの落とし穴の話が出てきた。
 怠惰 (ベルフェゴール)を使えるようになっていたおかげで思いついた作戦。一番の問題は蓋の事だったけどそれは紅の能力で解決した。奴の動きは庵さんが止める手筈で手数の多い僕が囮という大まかな方針で決まっていた。
 作戦が成功した安心感からか無視していた痛みが襲ってきた。倒れそうになる僕に後ろにいた紅が肩を貸してくれる。

「おいおい大丈夫かよ?」

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