PHASE-00 「覚醒」
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甲の展開も出来ない上、機体はピクリとも動かなかった。コックピット内の機材も、補助電源で稼働をさせている始末だ。
それすらもSOSの発信以外をオフにして節電をしなければ、そうは保つまい。
「やっぱり、さっきと変わってない……か」
癖っ気のある黒髪を掻き上げながら、シンは嘆息する。
気が付いた時点で真っ先に通信と現在地の確認をしたが、それから何も状況は変わっていない。
相変わらず通信は出来ない上、現在地も不明。
「取り敢えず、SOSは継続。――こっちのシステムは無事…だな。」
ディスプレイの表示を確認し、安堵と共にある種の複雑な感情を抱きながらも、シンは機体と携帯無線を連動させる。
数回スイッチのオン・オフして使用可能かを確認すると機体のディスプレイを落とした。
こんなものを使うことがなければ良い、そうは思っても軍人としての自分は取るべき行動をしなければならない。
思えば、上官に反発を繰り返し命令や軍規違反の常習犯だった自分だが、この数ヵ月でかくも人間は成長するものだな、とシンは苦笑した。
「よし、行くか」
携帯無線をベルトにぶら下げ、ホルスターの拳銃を確認したシンは、サバイバルキットを背負い、左手にトランクを右手にはノーマルスーツのヘルメットを持ち、機体から出る。
赤い双眸の先には見慣れない施設が建っている。
それは敵か、あるいは味方か。
目の前に建つ建物を目指してシンは歩き出す。
これが新たな運命の始まりだったとは、その時のシンには知るよしもなかった。
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