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東方虚空伝
第一章   [ 胎 動 ]
四話 その出会いは…
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ど巷には“永琳お姉様にこの身を捧げる会”なるものがあるらしい)
 話が逸れたな。まぁつまり永琳はすごいと言う事だ。
 頭の中でそんな事を考えながら研究所の入り口へと向かう。入り口には二人の兵士がいた。
『王宮守護団』
 王宮を守護する外壁守備隊と同じ[都の(みやこのたて)]の部隊だ。制服は赤を基調にしたラウンジスーツで袖や襟には青いラインが入っている。守護団の意匠である盾の形をした金色の刺繍が左胸の所にあしらわれていた。
 たしか総団長の名前が「黄泉 迦具土(よみの かぐつち)」だったような。
 まぁ、今はどうでもいいか。僕はそのまま近づいて二人に声を掛ける。

「すいませーん、ここにいる永琳に届け物を渡しに来たんだけど通ってもいい?」

 二人はそう言った僕を警戒するように視線を向けてくる。

「えいりん?…貴様!八意博士を呼び捨てにするとは!」

 一拍遅れて一人が怒鳴ってきた。

「怪しい奴め!すぐに立ち去れ!今なら見逃してやる」

 ひどい言われようである。僕ってそんなに怪しい奴に見えるかな?格好だって普通だ、青いトレーナーの上に灰色のパーカー、下は黒のジーンズ。怪しい点は無いはず。それに怪しい奴って言っといて見逃していいのか?
 そんな事言われても帰るわけにはいかないしな。

「ちょっと待ってよ、身元ならはっきりしてるよ。『外壁守備隊 第四連隊所属 七枷 虚空 』だ。照会してみてよ」

 僕がそう名乗ると今度は嘲る様な視線を向けてきた。

「外壁守備隊?外回りの連中がなんで王宮に来てるんだよ?」

 あきらかに侮蔑の表情を浮かべそう言ってくる。はぁーー、面倒くさいのに当たったようだ。
 王宮守護団の中にはなぜか自分達のほうが立場が上だと本気で思っている連中がいるのだ。事実そんな事は無く立場は平等なのだが。
 しかしこの二人のように見下してくる連中も少なくない。

「さっき言ったじゃないか、永琳に届け物を渡しにだよ」

「貴様また!ふん、だったら八意博士には俺が渡しておいてやる。さぁ早く寄越せ!」

 正直気が乗らないんだけど面倒だからこいつ等に渡すか…。
 そう思って書類を渡そうとした時、建物から別の兵士が慌てたように出て来た。

「大変だ!姫様が居なくなられた!お前たち見てないよな?」

「いや、見ていない。まだ中にいらっしゃるのではないのか?」

「解らん、もしかしたら何者かに攫われたのかもしれん!」

「よし!俺達も行くぞ!ここで姫様の窮地を救えば昇進もできるしな!」

 そう言うと見張りをしていた二人も一緒に行ってしまった。
 えっ?あんた等持ち場離れていいのか?ばれたら昇進どころか降格されるぞ。とりあえず心の中で連中にツッコミをしておく。
 
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