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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十 〜伏龍〜
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 諸葛亮ほどの人材ともなれば、望んでも手に入らぬであろう。
 それが、向こうから仕官を申し出てくるとは。
「何故、私なのだ?」
「はい。土方さんは常に、民の皆さんの事を考えて行動されています。私は、お仕えするならそういう方、と心に決めていたんです」
「ふむ。だが、民の事を重んじているのは私だけではない。曹操や公孫賛、我が娘月もそうだ。私でなくとも、仕官先には事欠かぬのではないか?」
「いえ。いろいろな方を見て、考えた末の結論です。それに、愛里ちゃんが選んだ御方です、それだけでも理由としては十分です」
「……なるほど」
「お願いします! これでも私、軍師としての自信はあるつもりです」
 決して戯れで申しているのではない、それはわかる。。
 愛里の推挙でもあり、構わぬ気はするが。
「愛里。稟と風はこの事、存じているのか?」
「……いえ。そうしたかったのですが、お二人ともお忙しいようでしたので」
 それはあまり、好ましいとは言えんな。
 見苦しく嫉妬するような二人ではないが、自他共に認める、私の掛け替えのない軍師だ。
 やはり、筋目は通すべきであろう。
「愛里、私は出陣せねばならぬ。二人に、この事は伝えておけ」
「わかりました」
「それから、諸葛亮」
「は、はい」
「此度の戦、同行は認めるが。軍師としての適性、見せて貰ってから仕官については決めさせて貰う事になる。良いか?」
「…………」
 諸葛亮は、何やら考えている。
 ややあって、
「わかりました。それで結構です」
 しっかりと、頷いてみせた。
 ……本来なら、諸手を挙げての歓迎、と行くべきなのやも知れぬが。
 これで諸葛亮が私を見限るのなら、それもまた定めなのであろう。


 兵の疲労も考慮しながらではあるが、それでも数日後には無事、渤海郡に辿り着いた。
 小休止を兼ねて、ここで敵の情報を集める事とした。
「はわわ、こ、ここまで短時間に敵情を探れちゃうんですね」
「これも、我が軍の強さの一つだからな。常に情報を重視する、というのが我が主の方針なのだ」
 星は、誇らしげに言う。
 持参した地図に、敵陣の位置と数を記していく。
「敵の数は、凡そ二万。対して、我が軍は三千、そして袁紹軍は三万五千。数の上では圧倒的に有利ですな」
「そうですね。勿論、袁紹軍と上手く連携を取れれば、ですけど……」
「しかし、解せぬ事があるな。袁紹軍にも、顔良と文醜という剛の者がいる筈だが」
 私の言葉に、星が頷く。
「……あのお二人は確かに強いのですが、軍を率いて戦う、という点に関してはあまり……」
「諸葛亮殿は、顔良殿や文醜殿と面識がおありなのですかな?」
「い、いえ。そうではなく、主な将の方とか軍師の方とかは、だいたい把握していますので」
「ほお
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