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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十 〜伏龍〜
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相手にしているのはそれだけではないらしい」
「と、おっしゃいますと?」
「どうやら、住民を先導しているのは、黄巾党の残党らしいのだ」
「なるほど……。それでは、袁紹軍が手を焼くのも仕方ありませぬな」
 星が腕組みをする。
「星、すぐに動かせる兵は如何ほどか?」
「そうですな。直ちに、となれば三千ほどかと」
「では、それを全て出そう。私が率いる、星も参れ」
「主自らお出になるのですか?」
「非常事態に、私だけ無聊を託つ訳には行くまい? 他に、手空きの者は?」
「そうですな……」
 星は少し考えてから、
「留守を預かる者は皆引き継ぎで出払っておりますし、他の者も出立の準備に追われておりますな」
「わかった。ならば直ちに準備にかかれ。兵の準備だけで良い」
「御意!」
 さて、糧秣の準備は私の方で行うか。


「主。四千の兵を揃える事が出来ました」
 二刻後、武装した星が報告に来た。
「ほう。予定よりも増えたようだが?」
「志願する者が、思いの外おりましてな。無論、ギョウの守備に支障を来さない数ですが」
「よし、では参るか」
「あ、歳三さん。ちょっと、待って下さい」
 息を弾ませながら、愛里がやって来た。
「如何した?」
「は、はい。こんな時に申し訳ないんですけど、是非、連れて行っていただきたい娘がいるんです」
「此度の戦に、か?」
「ええ。実は、一度歳三さんに会っていただくつもりだったんですが、急にこんな事になってしまって」
「して。その者は?」
「待って貰っています。歳三さんのお許しがいただければ、すぐに連れて来ます」
 愛里が推挙する人物となれば、間違いはなかろう。
「いいだろう。此処で待つ」
「はい、ありがとうございます!」
 慌ただしく、愛里は駆けていく。
「星、城門にて待て。私もすぐに向かう」
「はっ!」

「は、初めまして……」
 帽子を被り、髪を短めに切り揃えた少女。
 身の丈は愛里とほぼ同じぐらい、歳も同様というところか。
「私が土方だ」
「は、はわっ! あ、あの、私は諸葛亮、字を孔明と言いましゅ。あう、噛んじゃった……」
 諸葛亮と申せば……唯一人だけ。
 無論、その名は存じている。
 劉備が三顧の礼で迎えた、伏竜と呼ばれる程の天才に相違あるまい。
 見た目は幼く頼りないが、愛里がこのような時に、無為の人物を推挙する筈がない。
「愛里。水鏡塾の同期……そうだな?」
「え? 朱里ちゃんの事、ご存じだったんですか?」
 驚く愛里。
「いや、面識はないが。……諸葛亮」
「は、はい」
「私に面会を申し込んだ理由は何だ? 有り体に申せ」
「え、えっと……。わ、私をどうか、軍師として使って下さい!」
「私に仕官したい、そう申すのだな?」
「は、はい」
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