第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十 〜伏龍〜
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訳ではない。それまでの間、頼んだぞ?」
「はいっ!」
それから、更に二週間が過ぎた。
出立の準備もほぼ整い、皆と詰めの打ち合わせをしている最中。
「失礼します。土方様、渤海郡太守、袁紹様から使者が参りました」
「稟。確か、袁紹は私の上官に当たるのであったな?」
「一応、そのようです。ただ、陛下がお亡くなりになり、この制度そのものが既に宙に浮いていますが」
……よもや、それを笠に着るような真似などするとは思えぬが。
「とにかく、ここに通せ。皆も、此処にいるが良い」
「はっ!」
案内されてきた兵士を見て、何か違和感を覚えた。
……身に纏う鎧が、あの悪趣味な金一色ではない。
むしろ、動きを妨げぬ軽そうな鎧である。
袁紹らに、そのような発想の転換があるとは、意外であった。
「土方様に、我が主袁紹よりの口上をお伝えします」
「うむ、聞こう」
「はっ。まずは、助軍校尉叙任、心よりお祝い申し上げます、との事です」
「相わかった。忝い、とお伝え願おうか」
「畏まりました。それから、土方様の出立前に、一度このギョウを拝見したい、と」
「ほう。だが、袁紹殿も洛陽に向かわねばならぬ筈だが、如何なされると?」
「願わくば、この地よりご同道願いたい、と」
確かに、ギョウは洛陽へ向かう途次。
隠すべきものは別にないが……意図は何であろうか。
「……良かろう。袁紹殿に、この地にてお待ち申し上げる。そうお伝えせよ」
「ははっ! それでは、御免」
一礼し、兵士はすぐさま踵を返した。
「愛紗。あの兵の出で立ち、どう見る?」
「はい。以前の金色の鎧、防御には向いてはいても、実用には程遠い印象でしたが。あれならば、戦場で素早く立ち回れるでしょう」
「主、それだけではありますまい。動きやすいという事は、行軍速度も上がります。その分、糧秣の消費も抑えられましょう」
「そうだな。……ふむ、何やら、新たな動きがあったと見て良いな」
「ではでは、早速調べてみますねー」
私が指示する前に、風は動いた。
ふっ、以心伝心、という奴か。
数日後。
自室で私物の整理をしていると、急使が来たとの知らせを受けた。
急ぎ、謁見の間に行き、息を切らせた兵士の報告を受ける。
「袁紹殿が……?」
「はっ。如何致しましょう?」
「放ってもおけまい。至急対応する、下がって休め」
「はっ!」
さて、すぐに動ける者は……。
「主。何かありましたか?」
異変を察したか、星が駆けつけてきた。
「うむ。勃海郡にて、住民反乱が起きたとの知らせが入った」
「反乱とは、穏やかではないですな。しかし、袁紹軍は練度はさておき、兵数では弱小ではありますまい」
「確かに、単なる反乱ならば騒ぎ立てるまでもあるまい。だが、
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