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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
外伝
外伝1:フェイト編
第9話:帰港中の一幕
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グ」

隣のブースに入ったのはやはりヒルベルトで、薄い仕切り板越しに
ゲオルグに声をかける。

(やっぱり、ヒルベルトさんか・・・)

「なんですか?」

「お前、実家に帰らなくていいのか?」

ヒルベルトの言葉は金髪をガシガシとかき回していたゲオルグの手を止めた。

「仕方ないじゃないですか、僕は前半1週間が当直番なんだから」

ゲオルグは普段よりも少し低い声で答えた。
だが、言葉とは裏腹に彼の顔は苦虫をかみつぶしたように歪んでいた。

「じゃあ、来週には帰るのか?」

「ええ、まあ、一応」

ゲオルグが返事をすると仕切り板の向こうから聞こえていた
ゴシゴシという音が一瞬止まる。

(あ。”一応”はまずかったかな・・・)

ヒルベルトの反応で自分の発言を振り返ったゲオルグは心の中で舌打ちする。

(でも、正直言って家にはあんまり帰りたくないんだよなぁ・・・)

姉の死以来、ゲオルグの両親はゲオルグが管理局で魔導師をしていることを
よく思わないようになった。
その結果、ゲオルグは帰郷するたびに両親から管理局を辞めるように
言われるようになっていた。
管理局も魔導師も辞めるつもりのないゲオルグにとっては、
両親の言葉は単に重荷でしかなかった。

「なあ、ゲオルグ」

「なんですか?」

「俺が言うようなことじゃないのは判ってるし、余計なお世話だってのも
 理解してるんだけどな。お前の両親はいつだってお前のことを大切に
 思ってるはずだぞ」

諭すような口調で言うヒルベルトの言葉にゲオルグは聞き入っていた。

「どういう意味ですか?」

ゲオルグが聞き返すと、ヒルベルトがもたれかかったことで
仕切り板が小さな軋み音とともに少したわむ。

「ひょっとするとお前と両親の考えが違っていて、そのせいで家に帰りたくない
 とかお前が思ってるんじゃないかと思ってな。
 両親にお前の元気な顔を見せてやれって言いたかっただけだよ」

ヒルベルトはそこまで言うと、シャワーの湯を出して頭を流し始める。
その音を聞きながらゲオルグは考えにふけっていた。

(なんで、ヒルベルトさんには判っちゃうんだろうなぁ・・・)

ゲオルグは濡れたタイルが並ぶ床に目を落とす。

(母さんはともかく、父さんとはケンカになるから会いたくないんだけど・・・)

自分の世界に入っていたゲオルグは突如後から頭を軽くはたかれて、
意識を浮上させる。
振りかえってみると、バスタオルを腰に巻いたヒルベルトが立っていた。

「風邪ひくぞ」

そう言われてゲオルグは急に自分の身体がひどく冷えていることに気がついた。
慌てて湯を浴び始めたゲオルグは、自分の頭についた泡を流しなが
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