暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
バケモノは猫をも喰らう
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「まさか……、にーちゃんが《神装》を出せるようになってたとは思わなかった。卿にでも習ったの?」

眼つきを俄かに鋭くしながらレンは静かに言った。しかし、リョロウは軽く肩をすくめただけだった。

「まさか。卿をそんな些末な事で呼び出す訳にはいかないさ」

「てことは自力で、か。凄いねー」

「そりゃドーモ」

そんな気の抜けたような会話の中でも、両者は片時も気を抜いてはいない。じり、と足音を必要以上に鳴らし合い、互いが互いを牽制している。

まぁいいや、とレンは言った。

瞬間、レンの身体を漆黒の過剰光が包み込む。

それを見、リョロウは不敵な笑みを浮かべる。

「おや、無駄遣いは辞めたんじゃないのかい?」

それに、《冥王》と呼ばれた少年も幼い顔一杯に負けじと不敵な笑みを浮かべる。

「出し惜しみは無しだ」

「そりゃ残念」

視線が一瞬交錯する。

視線の中に宿る、戦意もしくは殺意という名の電圧がじわじわと高まり、仮想のスパークがパチッと音を立てて弾けた────その瞬間、ほぼ同時に両者は動き出した。

至近距離での大激突。

しかしそこで膠着せずに、身体を捻って次弾を叩き込もうとする。

リョロウも三つに分かれた先端の刀身部分ではなく、鋭く研磨されたように尖っているもう一方の先端をアッパーカット気味に突き上げてくる。

それを身体を思いっきりエビ反りになりながら避け、その体勢のまま腕を振るい、零距離でのワイヤーの一撃を叩き込む。

だが、ぐるりと手の中で回された三又槍がそれを防ぐ。

今度こそ膠着する両者。

超至近距離で交錯する視線で火花を上げ、再び両腕に力を入れて思いっきり押すように距離を取る。

どちらともつかずにニヤリと笑い、加速する戦闘の最中に突入する。

ザガかギキききキきききギギッッッ──────!!!

幾多の剣戟が応酬され、空間が不気味に軋む。

レンはその最中に、リョロウの背後の大木の幹に人間の等身大ほどの大きさの大きなクレーターができているのを見た。

人外の戦いの最中、レンは不思議とその窪みから目を離せなくなっていた。

───あれは、何でできたんだっけ………?

その答えを脳が吐き出したのは、全てが手遅れになった後だった。

ガサリ、という音が左後方から響き、レンが神速の勢いで振り向いた。

その視界に見えたのは、こちらに向かって猛然とした勢いで突進してくる《暗闇の瞬神》セイ。

両手を身体の後ろに回しているので、得物である片手剣は見えない。

その姿を見た時、一気に時間が緩慢になり、やがて全てが停止したようになった。人の道を外れるほどの超絶な反応力を持った者だけが至ることを赦された、禁断の時間。
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