暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
バケモノは猫をも喰らう
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もう発動していない。防御方法を確立した敵にそれ以上同じ攻撃を繰り返すのは無駄なことだからだ。
つまり、レンが学んだのは、気が付いたのはそんな簡単なこと。
いつも開きっ放しにしていた蛇口を、使う時にだけ閉める事を覚えたということ。溢れっ放しにしていた力の、本来の使い方を理解しただけ。
これは単純なことに見えて、この上なく重要なことだ。
どんな者でもガソリンを垂れ流しにしていたら、いつまでも行動ができる訳もない。燃料無しではエンジンは動かないからだ。
全く歩調を乱さずに、レンは歩く。
足元の短い草がさくさくと心地よい音を奏でる。そのサウンドエフェクトを耳で楽しみながら、《冥王》と呼ばれた存在はさて、と呟く。
「追う側と追われる側、これ以上ないくらい大胆に入れ替わっちゃったけど、この状況はどう収拾つけたらいいんだろうねェ………」
────を救うのを邪魔する者には容赦しない。しかし、向かってこない敵にこれ以上かまけているほどの時間も余力もない。
だからこそ、レンはさてはて、と悩む。
自分に敵意を向けたまま逃げる敵を生かすか殺すか、悩む。
その時、空気の質が変わった。
上手く言い表せないが、それは全身に生暖かい風が当たった時のような、全身の産毛が逆立つような感覚。
不快ではない。しかし、一種異様な感覚とでも言えばいいのだろうか。
しかしレンは、その感覚を押し殺して静かに眼を閉じた。
システムに頼った視界認識より、感覚と《
超感覚
(
ハイパーセンス
)
》を使った感覚認識のほうが、いくらか頼りになるからだ。
脳裏に浮かび上がる三次元的なマップ構造。その中でこちらに向けて疾駆する敵は唯一つ。
───この速さから見たらセイにーちゃんか。………リョロウにーちゃんの影が見えないな。囮か?それとも、ただ単に時間稼ぎか?だったら何の時間稼ぎなんだ?
泡のように浮かんでは弾けて消える、答えのない疑問。
しかし、いくら考えようとも答えは出てこない。ならば取るべき対処など初めから決まっている。
敵対する者には、すべからく死を。
ゴウッ!と黒い獄炎がレンの両手に宿る。
それだけで、周囲の草は悲鳴を上げて、身をよじるようにして消えていく。
魔女狩
(
ソルシエール
)
《
拒絶
(
リジェクト
)
》
ゴッ!!!と天が咆哮したような音が響き渡った。
背後から神速の勢いで飛び出したセイが放った突き攻撃と、レンが後ろすらも見ずに裏拳気味に突き出した獄炎の過剰光を纏わせた左手が衝突した音だ。
隕石の衝突にも似たその激突の余波は、周囲の大木を次々とドミノのように薙ぎ倒した。
渾身の突き攻撃を防がれたセイはコンマ数秒レベルで硬直する。それは、超反応を持つ者同士
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