崑崙の章
第22話 「みんなぁ、ただいまっ!」
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たい」
私はそう言うやいなや、黒い虫……いや、北郷盾二殿へ、槍を向ける。
「本気で……いきますぞ」
そう宣言して腰を深く落とし、槍を構えて息を整える。
私の目が真剣になったことを悟ったのか、先ほどまで慌てた表情だった盾二殿の目も鋭くなる。
「……本気か。理解は出来ないが……しょうがない」
さすがは盾二殿。
突然の状況でも、私が本気と分かれば、武人としてすぐに切り替えたようだ。
これは真剣勝負なのだと。
「……行きます!」
一瞬の溜め。
そして、その次の瞬間には、盾二殿の足元へと飛び込んでいた。
「ハイハイハイハイハイッ!」
高速の五連続の突き。
私が今できる最高の技。
ほぼ瞬時に眉間、両肩、両足へと正確に穿つ連続技。
これを出して、今まで勝てなかったものはいない。
その技を……
「………………」
「………………」
スッ。
首元に当たる、短刀の刃。
そして背後に立つ、透明な殺気の人物。
「まいりました」
その言葉に……盾二殿は刃を引いた。
「……だめでしたか」
私は苦笑しながら槍を収める。
やはりこの方には……勝てなかった。
「……いや、そうでもないけどね」
そう言って、私の正面にくる盾二殿。
その右腿の部分には……私の槍が当たった跡があった。
「一発避けそこねた……速かったよ。このスーツがなければ危なかった。強くなったなあ……星」
「……ふふ。やはりインチキですな、その服は……」
そうですか……当たっていましたか。
「最初はいきなり無視されたから、どういうわけかと思ったけどね。人が悪いよ」
「ふふ……それは主が悪い。私を誘っておきながら、いざその時には行方不明など……一発殴らねば気が済みませぬ」
「な、殴るどころか殺そうとしていませんでしたかねぇ……?」
「インチキな服を着てなければ、腹に一発ぐらいで済ませるつもりでしたとも」
「この服着ていても、痛いものは痛いんだよ?」
「おや、そうでしたか」
先ほどまで命のやりとりをしていた相手。
その相手に、親しげに話し、おどけて楽しませてくださる。
ふふふ……
やはりこの方との会話は楽しい。
あれから一年以上は経つというのに、こんなにも楽しい。
やはり……やはり此処こそが、私がいるべき場所なのかもしれない。
「星……約束通り来てくれたんだね?」
「ええ……我が主。この趙子龍、あなたと劉玄徳殿の理想を実現するために……そして私の理想を形とするために、共に戦わせていただきたく存じます」
「ありがとう……歓迎するよ、星」
そう言って、盾二殿は……とても
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