第二十五話 尻を蹴飛ばしてやろう
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綻すれば軍は必ず政府に泣き付きます。それが政府の動きに出る、撤退か或いは物資の追加か……、それが反攻の一つの目処になると思うのです。それを逃したくありません」
「なるほど、分かった。情報部に命じよう」
「国務尚書、フェザーンの弁務官事務所にもお願いします」
「分かった」
老人二人が頷いた。
「それと……」
「まだ有るのか?」
「これが最後です、国務尚書」
俺が宥めるとフンと鼻を鳴らした。貴族らしくない下品さだ。勝ちたくないのか? 戦争なんだ、遊びじゃないんだぞ。
「反乱軍がイゼルローン要塞に集結したらですがフェザーン経由で帝国軍が辺境星域を放棄した、辺境星域の住人は同盟軍の進攻を待っている、そういう噂を流して欲しいのです」
シュタインホフが国務尚書と顔を見合わせ頷いた。
「良いだろう、その方が早期に反乱軍が奥深くまで攻め込む筈だ」
ビュコックもヤンも帝国領奥深くに侵攻するのは危険だと思うだろう。だから二人の尻を政府に蹴飛ばさせよう。嫌でも前に行かせるようにする。あの二人は涙目かもしれんが馬鹿共は大喜びの筈だ。俺は親切な男なのだ、最低でも一回ぐらいは喜ばせてやる。二回は無いけどな。
「ここまで協力を求めるのだ、勝てるのであろうな」
「勝つために尽力は致しますが御約束は出来ません。多少有利かとも思いますが……」
「頼りないの」
国務尚書リヒテンラーデ侯がまた鼻を鳴らした。文句有るのか? お前は分からないだろうがビュコックやヤンと戦うんだぞ。甘い相手でもなければ柔な相手でも無いんだ。
「場合によっては反乱軍は不利を悟り早期に撤退する可能性も有ります。その時は戦闘が起きる事無く戦争は終結するでしょう」
「……」
「戦う事無く反乱軍を撤退させたのです。犠牲無しで勝利を得た、御理解頂きたいと思います」
不満そうだな、爺さん。しかし一番可能性が有ると俺は思っている。
「分かった、反乱軍が撤退する、つまり敵わぬと見て退くのであろう、ならば問題はない」
「有難うございます」
「何時オーディンを発つ」
「一週間後には」
三人が頷いた。
シャンタウ星域で同盟軍が飢えるのを待つ、そしてシャンタウならオーディンからも近い。貴族共に対する抑えになるだろう。その内にラインハルト達がオーディンに到着する。その頃には同盟軍は飢え始めるはずだ……。
帝国暦 487年 9月 16日 オーディン アンネローゼ・ヴァレンシュタイン
目の前で夫になった男性が夕食を摂っている。ザウアーブラーテンとフラムクーヘン。ザウアーブラーテンは本当なら馬肉を使う。でも今日は牛肉を代用した。料理の本を読みながら作ったのだけれど上手く出来た方だと思う。十年近く料理を作ることなく過ごしてきた私には毎日が練習のよ
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