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恋姫無双〜劉禅の綱渡り人生〜
劉禅、女装する
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。賊にさえも情けをかけようとする。しかし、配下の武将全員が甘い訳ではない。賊退治でそれなりの成果は挙げているし、孔明達も蜀の特産品の専売など、国を富ませる為の努力はしているのだ。生活に困窮して身を堕とすには、賊の数が多すぎる。
「これは、少し調べてみた方がいいかも知れないですね」
 普浄が考え込む。
「だが今は、目の前の賊をどう潰すか、だな」
「それについて、私に策があります」
 劉禅の言葉に普浄が返す。その言葉を聞いた村長が期待に満ちた目で普浄を見た。
「おお、策があるのですか!」
「はい。賊にも頭が必ず居るはずです。だから、その頭さえ潰せば賊は四散するでしょう」
「……おい、どうやって潰す気だ?」
 俺は普浄に問いかける。頭を潰すと簡単に言っているが、賊の数は五百以上と聞いている。こっちは少人数なのだ。
「貴方が乗り込むんですよ」
 普浄は事も無げに俺に言った。
「おい! お前は俺に死ねと言うのか!」
 二人どころか俺一人だと! 一人で五百の賊を相手にして、なおかつ頭を潰すなんて関羽でも無理だぞ。あの趙雲も以前に同じ事をして死に掛けたんだぞ!
「何も真正面から突っ込むなんて言ってませんよ。そんな事をしたら命がいくつあっても足りないですよ」
「そうか。で、どうやって賊の頭に近づく気だ?」
 俺がそう聞くと、普浄はニヤリと笑った。
「娘の身代わりになるんですよ。貴方は中性的な顔ですから、見破られることはないでしょう」
「…………は?」


「……屈辱だ」
 俺は輿に揺られながら憮然としていた。まさか、自分が女装する日が来るとは思わなかった。
「似合ってますよ、劉禅殿」
 ニヤニヤしながら普浄が話しかける。最早悪意しか感じない。
 普浄の策はこうだ。まず女装した俺が頭を討ち、混乱に乗じて普浄が村の若者百人を率いて奇襲をかけるというものだった。単純すぎる。だが、訓練されていない者を率いるのだから、単純な方が良いのかもしれない。
 しかし、屈辱である。恥ずかしくて顔を上げられない。
「そこで止まれ!」
 賊に指定された場所に着くと、そこには多数の賊が居た。ざっと二百人ほどか。
「輿を置いて、そのまま去れ」
 言われたとおりに村の者は輿を置いて去る。
「……劉禅殿、気をつけて」
 去り際に、普浄が俺にささやいた。心配するなら、俺を死地に追い込むなよ。
 そして、俺は賊のアジトに連れて行かれた。

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