第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十九 〜新たなる告白〜
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ではないつもりだ。だが、彩自身の言葉が聞きたかったのだ」
「……私の負けです。殿には全てお見通しでは……な」
そう言って、彩は顔を上げた。
「殿……お慕い申しております。私も、傍に置いていただきたい」
「良かろう。お前の心根、私にも愛すべきものだ」
「嬉しい……。殿と、やっと……」
眼を閉じた彩に、私はそっと、顔を近づけた。
そして。
彩は布団の中に潜ってしまっている。
その隙間から除く肌は、真っ赤になっているようだが。
「彩、辛くないか?」
「へ、平気です。この程度の痛み、物の数ではありませぬ」
強がってはいるが……そっとしておくべきだな。
「一つだけ、聞かせよ」
「……はっ」
漸く、布団から顔を覗かせた。
「いつから、私の事を?」
「……実を申せば、初対面の時だ。韓馥殿もそうだが、それまで出会った男は、軟弱者ばかりであった」
「お前の父親はどうなのだ?」
「……父は、物心がつく前に……」
「そうか。……済まぬ」
「お気になされますな。だが、殿は違いました。凛々しく、堂々とされていた。……ですが、その時はまだ、殿という人物を理解していなかった上、好いた男もおらぬ。恋など、私には無縁……そう思っていたのです」
彩程の武人ならば、尚更であろうな。
「だから、殿にお仕えする事になった時は、嬉しさ半分、戸惑い半分でした。……主としての才や人物には申し分ないが、私自身の気持ちに整理がついていなかったのです」
「…………」
「……だが、殿が洛陽に赴くとなり……このままでは後悔する、そう思った。だから……」
「そうか」
そんな彩が、いじらしかった。
布団の上から、そっと身体を撫でてやる。
「殿」
「何だ?」
「……本当に、宜しいのですか? 私はこの通り武骨者。稟や風のような才知もなければ、疾風のように身軽でもない。星や愛紗とて……」
「止せ」
腕を布団の中に入れ、彩を抱き寄せた。
「殿……」
「申した筈だ。お前の心根は、好ましいものだ。それに、この時代、お前のような者は欠かせぬ。他の者と比べてどうとか、そのような事で己を卑下するな」
「……わかり申した……殿が、そう仰せならば」
彩が、私の首に手を回してきた。
何度目かの、接吻を交わす。
「殿。今一つ、お願いがあります」
「申してみよ」
「……今宵はこのまま、眠らせていただきたいのです。宜しいでうか?」
「否……と申すとでも思うか?」
「ふふ……。では殿、お休みなさいませ」
翌朝。
衣擦れの音で、目が覚めた。
「あ、殿……。起こしてしまったか?」
「いや。身体の方は、大丈夫か?」
少し頬を染めながら、彩は頷く。
「お気遣い、痛み入ります。では殿、また後で」
そして、部屋を出て行
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