第三十九話 少年期【22】
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んて存在感があるんだ……!」
「…………」
自分でいうのもなんだが、俺の周りもなんか間違っているような気がした。
「それでは、『ぷにゅぷにゅ競争』を始めます。よーい、スタート!」
結局始まってしまったなら仕方がない、とみんなでグラウンドに集まったぷにゅのもとへ向かう。近づいてきた俺たちに、ぷにゅはじっと目を合わせてくる。ただじっと見つめ続けてくる。目が合わせられねぇ。
だけど、俺だって男だ。たかがゴ○ゴ似の顔を手で掴んで運ぶだけのことじゃないか。俺は意を決して、3メートルほど先で転がっているぷにゅに当たりを付ける。そして、やつの顔(一頭身だから身体かもしれんが)を両手でガシッと掴んでみせた。
「おーい、あんまり遠くに行くと危ないからなー」
「気を付けるよー、父さん、母さん」
久しぶりの家族みんなで訪れた海に俺はテンションが高かった。泳ぎには自信があったので、プールや海に行くのは昔から好きだったのだ。まだ本当に7歳の子どもだった俺はバナナボートを手に持ち、海に向かって駆け出していった。
サラリーマンの父が奮発して、母さんが企画してくれた沖縄旅行。初めて潜る沖縄の綺麗な海は俺を興奮させた。だけど遊び疲れてウキウキした気分で浜辺に帰ってきた俺に訪れた悲劇は、幼かった俺にトラウマを残していった。浅瀬になったため、足で海の中を歩きだした俺は気づかぬうちにやつと接触してしまったのだった。
ぶにゅッ。
えっ、と俺が驚きの声をあげた時には海に向かってひっくり返っていた。右足に感じた生暖かい感触。表面は硬めに感じたが、踏んづけたことで柔らかくぶにゅぶにゅした内側をリアルにとらえてしまい、ゾワッと全身に怖気が走った。さらにひっくり返った場所も悪かった。
ぷにゅッ。 ぶしゅぅーー!
身体を支えるためについた手からまたもや感じた感触。その潰した何かから白い糸のようなものが身体に絡みついた。当時7歳児だった俺は突如訪れた出来事に混乱し、浅瀬で溺れかけた。父親に助けられたので事なきを得たが、生き物好きの俺に唯一ダメだと拒否反応が出てしまう生物が誕生した瞬間だった。
そしてそのトラウマは、どうやら今世でも健在であったようである。
―――ぷにゅッ。
「う、うわぁ、うわぁ、うわぁぁあぁぁあぁぁぁ!!」
掴んだ瞬間によみがえった衝撃と記憶。本気の絶叫がグラウンドに響き渡り、そしてこの生物の名付け親がなぜこの名前にしたのかも俺は唐突に理解した。鳴き声や顔や存在よりも、それ以上に感触が衝撃的だったからに違いないと感じたのであった。
******
「おーい、後輩よ。生きているか?」
「あー、レティ先輩だ。こんにちは、……もしかしてさっきの
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