第三十九話 少年期【22】
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とね…。彼女は欲しいと思ったスキルや技があったら、頭を下げて教えを乞う姿勢を見せるほどの努力家だ。俺としてもいつかは再戦を誓っているとはいえ、ここまで女の子にお願いされるとな…。
それに、ぶっちゃけ話をしても問題はないのだ。彼女なら俺が何もしなくてもいずれ道を見つけてしまうだろう。つまり俺が彼女に教えたところで、それが役に立つ可能性がほとんどないと思うわけだ。なら話そうかと思ったが、コツは自分のデバイスを投げまくることです、なんて口に出せないと気づく。絶対説教の嵐だ。
「えっと、……あ、あれだ! 水切りだ! 水切り!」
「みずきり?」
「そうそう。昔はそれにはまってずっと遠距離を狙い続けていたからな。コントロールや手首の角度とかいろいろ勉強になるぞ!」
俺は前世で得た投擲スキルの習得方法を語ることにした。実際近所では、水切りなら向かうところ敵なしの実力だったのだ。全国水切り大会の上位成績常連者だったじいちゃんに鍛えられたからな。俺の投げ癖は間違いなくこれが原因だ。じいちゃんが生きていた間は、昭和系な遊びばかりしていたものだ。
しかし今思うと、俺って金のかからない子どもだったんだな…。いやでも、クリスマスプレゼントにサンタさんへのお願いで『平たくすべらかな丸みを帯びた石(複数)』って書いて、本気でクリスマス会議を開かせてしまった両親を思うと難しく感じてきたなー。
―――ちなみにこの時俺は、説教から逃れるために勢いで話していたため気づかなかったことがあった。
川辺という自然の場所が、このクラナガンにはなかったことを。きれいに整備されているため、河原などもなく小石なんて落ちていない。そのためクラナガンの子ども達は『水切り』という遊びを知らなかったのだ。
それはクイントにも当然当てはまる。勢いで話す俺に『みずきり』とは何かを切り出せなかった彼女は、仕方がなく自分で結論を出してしまったのだろう。クイントはそれを正しいと思い込んでしまい、俺自身は彼女との間に認識の齟齬があったことにこの時最後まで気づかなかった。
「なるほど…。水を斬るのね……」
これから4年後、この食い違いが俺を最大のピンチへと至らせるきっかけになったのだから、自業自得と言うしかなかった。
「むむぅ、どうしよう…」
「そんなに悩むことかなぁ、アリシア」
「メェーちゃん、アリシアに何かあったのか?」
「あっ、アルヴィン」
クイントとの話も一区切りしたため、俺はアリシアたちの会話に加わることにした。どうやらかけっこの話は終わっており、今は別の話題に入っているようだ。女の子組が集まっており、クイントの友達だという紫の子も一緒にいる。その子が俺を見つけると、なんだか口元に笑みを浮かべながら声をかけてきた。
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