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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その2
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・・・それはあなたが好きだった人だ。違うか?」
「・・・勘が良いな、その通りだ」
「何となく分かるんだよな。昔は分からなかったけど、この年まで成長すると分かる事もあるって、最近ようやく気付いたんだ。何時までも鈍感気取ってられないって事かな。例えば、誰かの『好き好きこっち見て』、みたいな視線とかなら、大体分かっちゃうんだよ」
「それではまるで、私の眼つきが若い恋人のそれであったから気付く事ができた、と言っているようなものではないか」
「事実、そうだったよ。孫堅殿のはそうだったし、それが出来る分、あなたはとても幸せな人生を送って来たんだなぁって思うよ。俺は今まで、割とそういう体験には恵まれなかったんだよな。特定の女性と仲良くなるなんて。ほら、こんな御時勢だし」
「御時勢?お前の場合は違うように思える。その手の体験から逃げていたのではないか?失うのが余りに恐ろしすぎるから」
「・・・勘が良いな」「ああ、やり返してやった」

 くすりと笑みをかわしあう両者。仁ノ助は気付いただろうか。自分が思っている以上に鈍感であった事に。孫堅が自分を見詰める視線が、彼女が夫を見るであろう深い安らぎと、まるで昔日の思い出を想うような寂しさを同居させていた事に。

「今日は話せて良かったよ。色々な事に気付かされた。・・・冷え込んできたし、そろそろ戻るとするよ」
「私はもう少し月を見ていよう・・・今日は中々に壮麗な輝きだからな」
「分かった。では、孫堅殿。お休み」「ああ、お休み」

 仁ノ助は大剣をひょいと背負うと、切っ先を月に向かってぶらぶらと揺らしながら天幕へと戻っていく。川に釣りに向かうような気楽なものを背負った背中に、孫堅は悟られぬように微笑みを零す。

「・・・後ろ姿も似ているな。あいつに。まったく、世の中は本当に分からないな」

 足取り軽く消えんとした仁ノ助であったが、小石に躓いたのかたたらを踏んでしまい、足が絡まって前方に転がってしまう。孫堅は堪らず噴き出してしまい、彼の名誉のために顔をひょいと背けた。震える肩を見られはするだろうが、それもこれも面白いほどに夫に似た、どこか気の抜けた所がある彼の性質のせいであった。
 月光は美しく空と、大地を照らす。虫の囀りが寝息を誘い、そのうちに人気は静まり返り、篝火がばちばちと弾ける音だけが響いていく。 



ーーー翌日、南宗の大広場にてーーー



「みんなぁぁ!ちゃーんと楽しんでいるぅっ!?」
『ほわアアアアアアああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!』

 相も変わらずの気勢、いや奇声を上げて狂喜乱舞する彼らを見て苦笑いが出てしまう。敬愛する女性達がいわゆる可憐さの象徴のように彼らの心には映っているのだろうが、だからといってこんな形でそれを現さなく
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