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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その2
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いる、孫堅であった。史実では勇壮な将軍と称され、演義では虎のごとき躰とも言われるくらいの偉丈夫であるとされていた。しかし有名武将が軒並み生まれながらの性転換を果たしているこの世界では、その定めによるものか、孫堅は美しい女性へと変貌を遂げていた。
 月光に照らされる燃えるような赤く長い髪は錘琳にそっくりであるが、妙齢の女性特有のえも言われぬ艶やかな雰囲気は、内心に秘めた情熱を予感させるものであり、錘琳ならばあの余裕ぶりを出すには後数年は掛かるだろうと感じた。南方の呉郡富春県出身のためか、日本でいう九州美人のように顔立ちは濃く、あたかも外国人と面しているような気持ちとなる。挑発的な視線は豊満な躰に相応しいもので、腰に手を当てて此方を観察してくる様はとても絵になっており、スリットの入った衣服から覗く太腿には色っぽさが感じられた。
 聞いた話によれば、孫堅は末娘である孫尚香を出産した数年後、伴侶である夫を流行病で失くしてしまい、それ以来このような大胆な恰好をするようになったそうだ。亡き夫への貞淑さを貫くための自分に課した試練であるという噂もあれば、所構わず男を食うための誘いの衣装であるともされた。仁ノ助が抱いた印象は後者の方であり、彼女の妖艶な雰囲気に思わず喉をごくりと言わせたくなってしまった。『彼女を抱けばどんなに気持ちの良い事か』。思わずそんな考えが過ぎってしまった。
 「いかんいかん」と、仁ノ助は気を取り戻す。女性的な部分を何時までも見るのは不躾である。なるべく相手の顔を見るようにして彼は問う。敬語を使わないのは、ただの雰囲気作りのためだ。

「もう寝る時間だってのに酔狂なもんだな。月を見に来たんなら、天幕の外で大丈夫だったんじゃないか?こんなに明るんだからな」
「衛兵がうるさくてかなわん。あんなに口喧しくせんでいいと言っているのだが、誰の教育か、何かと気苦労を掛けてくれるのだ。有難いのだが過剰でもある。それに、夕刻の鍛錬を覗いてな、興味もわいたのだ」
「・・・御人が悪い。あれを見ていたのか」
「ああ。宙を吹っ飛ぶ様はなかなかに面白かったぞ」

 ーーーそこは見逃してくれよ。

 仁ノ助は思わず唇をぎゅっと引き締めてしまった。夕餉の後に交わされた自分と夏候惇の模擬試合の様子を見られてしまったらしい。
 孫堅は僅かに表情を引き締めて感想を述べた。

「思うにな、仁ノ助。お前は体幹がしっかりしていないのだ。剣筋は我流と評するに値してもいい程に研鑽されているし、滲むような努力を重ねているのが理解出来た。だが守勢に変わった途端、相手の勢いに飲まれて振り回されていたぞ。刃の逃し方だけは巧かったがな」
「・・・経験によるものさ。今まではずっと、勝つか逃げるかの二択しかなかったから。誰かと長時間戦って、しかもずっと守勢に回るってのはどうも性に
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