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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その2
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夏候淵将軍の副官という立場を奉じられた。彼女は尊敬する将軍の傍に置かれることを喜びつつも、一方で狙った獲物を見る目でじろりと猫耳軍師を見ていた。そういう方面での情熱は失われないのが逞しいものであった。

「・・・草の報告によれば、西華にて黄巾賊がさらに集結しているとのこと。数はどのほどまでに膨れ上がるでしょうか?」

 思慮に耽っていた仁ノ助を隣で馬を進める青年が尋ねた。頭に黒の鉢巻を巻いており、歩みと共に鉢巻の紐がふらふら揺れる。偶然にも仁ノ助と同じ色の外套を着ているが、得物はさすがに違う。彼の得物は大きな蛮刀であった。
 この青年の名は曹洪といい、先の戦いにおいて詩花と同じく軍功を挙げて特別な立場を与えられた者の一人である。その軍功は首級の数二十余であり、曹操軍の新兵の中では傑出したものだ。実力もまた軍功に恥じないものがあり、長社にて仁ノ助と模擬試合を行った結果、七戦して三勝四敗。惜しくも仁ノ助に敗れてしまったが、その実力はほとんど拮抗しているともいえた。それ故に仁ノ助は彼の力を疑う余地も無かった。

「推測に過ぎないが、先に戦に敗れた者も合流しているとすると、だいたい十五万といったところかな?あくまで予測だけどさ」
「やはり数だけは一人前ということですか」

 敗れ続けになっているとはいえ戦力の確保には困らぬ賊軍。張角による太平道術の信奉者と生活の糧を求める民草と、そして下卑た賊による連合軍とはよくいったもので、合わせて十万にも満たないこちらから見ればその数だけは羨ましいものがあった。

「ですが脱走者や離反者にも困らないだろうな。彼らの求める物はすなわち『生活の安寧』。それが黄巾で実現できぬならば自らの傷の浅いうちに逃げるのも当然だ。うちらの勝利は揺るぎないものだろう」

 行軍中に早馬より聞き及んだことであるが、荊州南陽郡の賊軍の将である張曼成が南陽太守の攻撃により討伐されたそうだ。すぐに別の将である趙弘が擁立されて宛という地方に篭城したらしいが、遠からず多くのものが脱走、もしくは官軍に降伏をすることであろう。西華での戦いはいわばそれを確定するための一戦といえる。

「まぁ、華琳様の戦術が発揮されれば負けるなんてありえないな。たとえ相手が自軍の二倍以上の数であったとしてもだ」
「全くもって同感ですね。欠伸をする余裕はありませんが、切り落とす首の数はきちんと数えられるでしょう」

 まだ見ぬ新たな戦が迫っているのにも拘らず二人は至極冷静でいた。よほどの自信があるのか、はたまた敵が予想以上に脆弱である事に安心しているのか。どちらにとっても彼らのどっしりとした態度に部下たちは何の負の心を抱いていない。上司が安定して構えていれば部下も安心できるということである。
 黄巾の乱は今、折り返し地点を過ぎようとしていた。

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