仔狼の苦闘
[1/4]
前書き [1]次 最後 [2]次話
第二次ランテマリオ会戦の前半の一局面において、快進撃を続けていたバイエルライン大将の艦隊の足が止められたのは、十一月二五日の二十時三十分のことであった。
突如密度の濃くなったロイエンタール軍の反撃に、まず先頭集団が壊滅した。
「戦艦フロースガール、イェータランド、ヘオロット撃沈!」
かつての旗艦を失ったことにバイエルラインは舌打ちした。だがこの時点では未だ、突破は不可能ではないように思われた。
バイエルラインは彼よりはビッテンフェルトに似つかわしい物言いで反撃を命じた。
「撃ち返せ!突破して敵本陣への道を開く!」
だが二時間もせぬうちに、彼はその雄図を実現させるためには攻撃力が圧倒的に不足していることを悟らざるを得なかった。ロイエンタールの構築した防衛線が仔狼の牙程度で噛み破れるほどにやわなものではなかったと気付いた時には、バイエルラインの艦隊は危険なほどにロイエンタール軍の布陣の奥深く入りこんでしまっていた。
「突破は無理か!反撃しつつ後退せよ!」
「ほう、退き時を心得ぬというわけではなさそうだな。だがもう少し早く決断すべきだった。…ベルゲングリューンに連絡!」
ダスティ・アッテンボローがこの場にいたら、性質の悪い結婚詐欺師の手管のようだと評したかも知れぬ巧妙な後退によってバイエルライン艦隊を誘いこんだロイエンタールは最も信頼する副将であるベルゲングリューン大将麾下の戦力を「生意気な青二才」の顔面に「叩きこんだ」。
「天底方向から高熱源体多数、急速接近!」
「馬鹿な!真下だと?」
突如予想してもいなかった方向からビームとミサイルの攻撃を受け、グーデ少将は指揮シートから立ち上がり、叫んだ。
グーデ少将の率いる分艦隊一四〇〇隻は恐慌状態に陥った。
「敵旗艦艦型照合。戦艦ハーゲン!バルトハウザー艦隊です!」
「『トリスタンの投げ槍』!!」
ロイエンタールの切り札の一枚の通称を誰かが、絶望とともに呟いた。
味方としてあったころにはさほど脅威には感じていなかったが、敵となって現れるとその一突きは恐ろしい。
「迎撃しろ!近距離砲で狙い撃て!」
「遅い!全艦最大戦速!一気に離脱する!」
ようやく驚愕から立ち直ったグーデが迎撃を命令するころにはバルトハウザーの艦隊はすでに彼の分艦隊を柔らかい下腹から背中へと引き裂いて天頂方向へと脱出を果たしていた。
失った時間は分単位のごくわずかなものだったが、その時間はグーデにとってはまさに命取りとなった。
「直撃、来ます!」
一瞬足の止まったグーデ艦隊にロイエンタール直属の戦艦部隊の砲火が襲いかかった。
グーデの旗艦ザンデルリックは艦橋にビームの直撃を受け、護衛の戦艦共々巨大な火球と化した。何が起こったのか理解する間もなく、グーデ
前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ