暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その1
[8/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
すか?いつか仁ノ助が言っていた・・・」
「へぇ。詩花、それに仁ノ助も、なかなか頭が回るじゃない。そう・・・おそらく、いや確実にそうね。『その者』はその乱世の到来を予見して、全てが自分達に都合のいい方向に運ばれるべく手を回した心算でしょうね。方々に諸将が軍旗を掲げ、剣戟を交えて憎悪を向けあう。その時代を生き残るために必要なのは、自分自身、そして家族すら利用しきる狡猾さ。そして誰よりも多くの人間を支配できる権力よ。そう、誰よりも多く・・・」
「読めてきました。詰まる所こうですか?『そいつら』は早い段階で俺達を黄巾党の本体とぶつけて、御互いを噛み付かせようとしたと。そんで戦況がうまいこと拮抗したら、美味しい所だけを持っていって、朝廷から高い位を頂いて、誰よりも前に立たんとしたと」
「私の想像と一緒よ、仁ノ助。まぁ、仮に手を回さなくても、あの忌々しい宦官共なら簡単に官位など授けるでしょうね。それにぶら下がる責任など知らないで・・・。それで、あなたは事の理由を推量した上で、何を想うのかしら?これを考え出した黒幕に対して」
「・・・凄く馬鹿らしいですね。迂遠過ぎます。今は皆が一致団結して事に当たるべき時代でしょう?結末が見えたからって身内で争い始めるのは気が早いだけではなく、誠実さに欠けます。もしそれがただの想像でしかなかったと分かっても、虚偽の報せを届けたのは事実。しかもどのような意図によるものかも分からない。不愉快ですね」

 吐き捨てるような忌憚のない物言いに曹操は噴き出し、俄に驚いたように荀イクが目を遣った。主がこのように隙を作るのはそうそう無い光景であったのだ。
 口元に悠然とした笑みを浮かべながら視線が集まるのを待った後、曹操は泰然自若とした様子で語っていく。世界の定めを受け入れるような冷徹さを秘めながらも、真に迫るような確信に満ちた口調は、仁ノ助の心から決して消えないであろう存在感のあるものであった。

「どのような理由で彼らが私達を貶めようとしたのかは分からない。しかし、今やる事には変わりは無いわ。目の前に立ち塞がる障壁を、一つずつ、着実に破壊していき、そしてその初め一歩として長社の街並みを整備していく。決して高望みはしてはいけない。
 皆、思い出しなさい。我等は黄巾党の反旗が上げるのと同時に『曹』の旗を掲げた、歴史の浅い一集団。戦場を移るにつれて練度は増していくけれど、その数は決して多い方では無い。私の兵だけで何人いるか知っているかしら?のべ、六千五百人よ。これは輜重や伝令部隊も込みでの数よ。対して皇甫嵩将軍の軍は、二万五千。朱儁将軍の軍は戦闘員だけで約二万。この兵数は私達に現実を突き付けているわ。『実力以上の奇跡は、決して起こりえない』と」

 長きに渡って彼女を支えてきたであろう、夏候姉妹は特に感慨に耽るように表情を引き締め
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ