第12話 今度は三人仲良く、だそうですよ?
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。あたしが手伝って上げるから、そんな事はちゃっちゃと終わらせちゃいなさい」
かなり勝手な事を言いながらも湯船から立ち上がり、ハクの傍らに立つシノブ。
「すみません、シノブさん」
少々立ち過ぎの感の有るシャボンの泡に塗れた向こう側から、そう感謝の言葉を発するハク。
但し、この時の彼女に、上から自らの事を見下ろすシノブと名乗った少女の顔を確認する事が出来たのならば答えも変わって居たであろうし、更に、この直後から始まる事態も少し変わって居たであろう。
そして……。
そして、次の瞬間。其処には哀れな仔羊が一匹と、獲物を狙うオオカミが存在するだけで有った。
☆★☆★☆
何故か、非常に疲れ切った雰囲気で湯船の縁に因り掛かるようにお湯に浸かっているハクと、その隣で妙に爽やかな笑みを漏らすシノブと名乗った少女。
其処には、明らかな勝者と、そして無残な敗者の姿が存在していた。
「大丈夫、ハクちゃん」
心配げに彼女の顔を覗き込み美月。
但し、正にさわらぬ神に祟りなし、の格言通り、ハクの事を見捨てたのも彼女だったりしたのですが……。
もっとも、少々触られるぐらいなので生命の危険が有る訳ではなし、と言う考えで放置したのは間違いないのですが。
「だ、大丈夫ですよ、美月さん」
力のない笑顔でそう答えた後、再び湯船の縁に突っ伏して仕舞うハク。
この様子では……。
「明日は一日お休みかな」
疲れ切った状態のハクを見つめて、そう独り言を呟く美月。それに、彼女がやって来て四日で東から水を得、西からの死の風の元を断ち、北からの森の侵食を防いだのです。一日ぐらい休んだとしても問題ないでしょう。
しかし、
「何を呑気な事を言って居るのよ。休んでいる暇なんてないわよ、美月」
しかし、ハクを挟んだ向こう側の湯船に両足を伸ばした形で浸かって居たシノブが、何故か拳を握りしめながらそう叫ぶ。
そして、言葉の勢いに任せて立ち上がり、一歩前へと大きく踏み出し――
「青春と言う時間は長いようで短い物なの。立ち止まっている暇なんてないわ!」
更にテンションを上げて叫んだ。
まして、その言葉は有る程度、理に適った内容。確かに人間に取って時間は有限の物で有り、それが青春時代と言う色が着いて居る時間ならば尚更。
但し……。
但し、そう叫んだ本人が、ほぼ永遠に等しい青春時代を謳歌している存在なので、説得力と言う物がまったくと言って良いほど無かったのですが。
正に、見た目年齢が永遠の十六歳と言う美少女でしたから。
そうして……。
そうして、むせ返るような湯気に包まれた浴室内に、奇妙な空白の時間が訪れる。
天井から落ちて来る雫の立
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ