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銀河英雄伝説〜悪夢編
第二十二話 俺にも矜持という物が有る
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がその表情は芝居だろうな。

「本人が望んだわけではないがグリューネワルト伯爵夫人があの一件で利益を得た事は間違いない、あの小煩いベーネミュンデ侯爵夫人を自らの手を汚す事無く始末出来たのだからの。だがそれだけに周囲からは非難を一身に受ける事になった。悪い事に伯爵夫人には後ろ盾が無い、その事も非難に拍車をかけた……」
ノイケルンも頷いている。嘘では無いようだ、実際責め易い立場ではある。それにしても小煩いか……、本音が出たな、御老人。

国務尚書が口を噤むとノイケルンが後を続けた。
「このままいけばいずれは宮中において伯爵夫人を追放しろという声が上がるでしょうな。そうなっては陛下も夫人を庇いきれませぬ。言い辛い事ではありますが元はと言えば陛下の寵を争っての事、それを突かれれば陛下と言えども口を噤まざるを得ないのです。おそらく伯爵夫人は流罪に近い様な扱いを受ける事になりましょう。そのような事になれば陛下は面目を失する事になります」
元々面目なんて有るのかね、あの老人に。

「それ故陛下は卿に伯爵夫人を託すというのじゃ」
「……」
「卿はあの事件の被害者、皆は陛下からの卿に対する贖罪とみるであろう。そして卿は軍の実力者でもある、いずれ反乱軍が攻め寄せた時には卿がそれを打ち払う、そうなれば誰も伯爵夫人を責める事は出来ぬ筈じゃ」

なるほどな、このままではフリードリヒ四世にまで非難が及ぶ。国務尚書はアンネローゼが邪魔になったか。フリードリヒ四世が俺に託したと言うのは嘘だな、真実は国務尚書が皇帝を説得した、皇帝はそれを拒否できなかった、そんなところだろう。だとするとこの話を拒否するのは無理だろうな、だいたい皇帝から寵姫の下賜というのは名誉なのだ。ここまで言われては拒否は出来ない……。だがな、俺にも矜持という物が有るのだよ、平民の矜持がな。お前達がそれを踏み躙る事は許さない。

「分かりました、有難くお受けいたします」
「おお、そうか」
「ですが、条件が有ります」
「……」
喜んだのも束の間、国務尚書の顔が疑い深い表情になった。

「グリューネワルト伯爵夫人が爵位、所領など陛下から頂いたものを全て返上する事、その上でならお受けいたします」
「……」
「夫人への周囲の非難も止みましょうし、何より夫よりも妻の方が財力が有るなど御免です。不和の原因以外の何物でも無い。そうでは有りませんか?」

俺の言葉に国務尚書とノイケルン宮内尚書が顔を見合わせて苦笑を浮かべた。
「なるほどの、確かにその通りじゃ。宮内尚書、伯爵夫人を説得してくれんか」
「私がですか? これはまた厄介な……」
ノイケルン宮内尚書が顔を顰めた。

「幸い伯爵夫人は物欲は強くない、何とかなるであろう。何よりこのままでは惨めな未来が待つだけじゃ、その事は夫人も
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