崑崙の章
第21話 「ほらよ……涙拭けって」
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朱里の……おかげ?
「……あの、桃……いや、劉玄徳様のおかげってのは、刺史様なのだからわかりますけど。なんで宰相様の名前が?」
「そりゃ当然だよ。この市場を実質的にしきっておられるのは諸葛孔明様なのさ。あの方は凄いよ、今まで不正に市場税を取っていた組合を廃止して、その組合の力で小さな市場を牛耳っていた商人をも追放してくださった。その上で、誰でも商売をしてもよいとおっしゃってくださったんだよ」
「それだけじゃねぇぞぉ。今まで作った米は、南の巴郡までいかなきゃまともな収入にもならなかったのに、この漢中でちゃんとした商売にできるように整えてくださった。それだけでなく、不平等な買い取りも強制的な徴収もない。こんな素晴らしい場所は他にないぜ!」
「おおよ。今まで関税ばっかりとられてろくな稼ぎにもならなかったが……ここでまともに商売できるありがたさ。その上、五割も取られていた市場税を二割にしてくださった。本当にありがたい」
五割もぼっていたのか、ここの責任者……
そりゃ、通常に戻しただけでもありがたがられるな。
「それによう……みろよ、この市場の品揃え。香辛料にじゃがいも、カブや大根、小麦に大麦、季節の野菜から肉まで……たった一年。たった一年でここまで広げることができる人が、この大陸に他にいるか?」
………………
それはたしかにそうだろう。
この市場のにぎわいは、朱里と雛里、そして桃香たちの努力の結晶だ。
「その宰相様がいうんだよ……『これらの今は、全てあなた方のおかげです』って。そんなこと言われたら……言われたらよう」
ぐすっと涙ぐむおっちゃん。
いや、周囲を見れば、商人全てが涙ぐんでいる。
「俺達が少しでも恩を返さなきゃ、バチが当たるだろうが……」
「そうだぜ……ぐずっ。あんな小さい子に褒められて嬉しいなんて情けないけどよ。俺達だって、人の子だ。信頼に応えなきゃ、野獣も同じだろ」
「あたしだって嬉しいよ。一年前までひもじい思いをさせていた子供に、毎日いっぱいのご飯を振る舞える……そんな世の中にしてくれた子が、あたしらのおかげだなんて。徹夜で目にクマを作ったまま笑うんだよ?」
「ここの商人は誰もが諸葛孔明様に……そして刺史であり、太守であられる劉玄徳様に感謝しているんだ。その方々のためにも、俺達が……俺達自身が少しでもこの市場をもっとよくしていかなきゃな!」
そう言って、互いに笑い合う商人たち。
そうか……
朱里は……そして桃香たちは。
俺がいなくても、そこまでやってくれているんだな……
「……? 兄ちゃん、オメエも感動しているのか?」
「え?」
「ほらよ……涙拭けって」
そういって、布が渡される。
気がつけば……俺の目からは、大粒の
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