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占術師速水丈太郎 白衣の悪魔
2部分:第二章
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まだ確信を得ていないといった声で。
「そもそも相手が人間かどうかすら不明といった有様です。証拠も何もない状況なのです」
「証拠も。目撃例も」
「簡単な話ですよ。姿を見た人間は皆死んでいます」
 実に簡単かつ明瞭な返事であった。だから目撃例が皆無なのだ。見た者が全て死んでいるのならば自然とそうなるのは道理であった。
「誰もがね」
「そういうわけですか」
 速水はそれを聞いてあらためて考える色をその右目に見せてきた。生憎左目は髪に隠れて見えはしないが。
「一応はです」
 それでも男はこう断ってから話を切り出してきた。
「残った手形や汗、唾液、歯形は人のものでした」
「身体を引き裂いたり千切ったり食べた後はですか」
「そうです。それを見る限りは人です」
 何かやけに引っ掛かる言葉であった。あえて人ではあるということを強調するような。奥歯にその何かが挟まっているのではないかとも思わせる言葉であった。
「ですが。その力も行動も」
「所謂魔人ですか」
 速水はその考える目でこう述べてきた。
「人でありながら人ではない。異形の存在ですね」
「話が早いですな」
 男はその言葉に対して満足したように頷いてきた。
「そうです。簡単に申し上げるならばそう呼ぶべきでしょうな」
「わかりました」
 男のその言葉に対して納得した言葉を述べてきた。
「そして貴方は私に彼に関する事件の解決をお願いしたいと」
「その通りです。宜しいでしょうか」
 男は速水の右目を見て言う。じっと見据えて。
「占術師速水丈太郎さん、貴方に仕事を依頼したいのです」
「それでは御聞きしましょう」
 速水はそれを聞いてから男に対して問い返す。カードの手は完全に止め指を組ませてテーブルの上に置いている。
「貴方の御名前は」
「私の名前ですか」
「契約者のことは知っておかなければなりませんので」
 彼は言う。
「御教え頂きたいのです。契約をされるというのならば」
「わかりました」
 男はそれに応えて頷く。それからゆっくりと口を開きだした。
「私の名は山寺敦也」
「山寺さんですか」
「はい、北海道警に勤める者です。警部でこの事件の責任者であります」
「山寺警部と御呼びして宜しいですね」
「はい」
 山寺と名乗った警部はその言葉に頷く。
「その呼び名で御願いします」
「これは北海道警の依頼でしょうか」
「その通りです」
 警部はその言葉に応えてきた。彼が速水の前に来た理由はそれであったのだ。
「ですから。宜しいでしょうか」
「契約ですね」
「そうです。御返答は」
「はい」
 口元にすっと笑みを浮かべさせて答える。


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