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保安官
第五章
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「やれやれだな」
「あの、どうして隠してたんですか?」
 村人の一人がその彼に問うた。
「眉間のビルであるってことを」
「だからもう荒い時代じゃなくなってきているからな」
 だからだというのだ。
「静かに暮らしたいって思ってな」
「それでなんですか」
「眉間のビルであるってことを隠して」
「上手くいかないな、今時こんな連中が来るなんだな」
 自分が眉間を撃って倒した五人の骸を見てまた言った。
「隠せるものじゃないんだな」
「あの、それで」
 先程までならず者に捕まっていた娘が彼におずおずと尋ねた、今度は彼女だった。
「これからどうするんですか?」
「これからかい?」
「はい、これから保安官さんは」
「そうだな、もう正体はばれたしな」
 眉間のビルである、そのことがだというのだ。
「またこんな連中が来るかわからないからな」
「それでは」
「長い間世話になったよな」 
 村人達の方を見て寂しい顔で告げた。
「もうな」
「あの、それでは」
「馬はあるから心配しないでくれよ」
 その気遣いは無用だというのだ。
「何処かに流れていくさ、またな」
「そんな・・・・・・」
「じゃあな」
 娘に対してだけでなく村人全てに告げた言葉だった、そうして。
 彼等に背を向けて去ろうとする、だがここで。
 村人達はその彼に対して言った、丁度彼等に背を向けたところの彼に対して。
「待って下さい、オコーネルさん」
「お話を聞いて下さい」
「話?」
 オコーネルは背を向けたまま彼等の言葉を聞いた。
「話って?」
「貴方はいい保安官さんですし」
「この村に残ってくれませんか?」
「皆貴方が好きですから」
「是非」
「俺は眉間のビルだぜ」
 オコーネルはまだ背を向けている、そのままでの言葉だった。
「またさっきみたいな連中が来るかも知れないけれどいいんだな」
「いえ、貴方はオコーネル保安官です」
 村長が背を向けたままの彼に言った。
「それ以外の誰でもありません」
「眉間のビルじゃないんだな、俺は」
「眉間のビルはかつての荒い時代のガンマンですね」
「ああ、そうみたいだな」
「それならもう眉間のビルはもういなくなりました」
 姿を消したというのだ、荒い時代と共に。
「あのならず者の連中もそうした時代の連中ですから」
「もう来ないっていうんだな」
「消えていきます」
 そうなっていくというのだ。
「自然に」
「そうなるかね」
「時代が変わろうとしていますから」
 実際にこの村もかつての雰囲気はすっかり消えようとしている、畑も落ち着き砂埃から麦やとうもろこしの匂いがしだしてきていた。
「ですから」
「そうなってくれたらいいな」
「ですから、オコーネルさんも」
 眉間のビル
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