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保安官
第一章
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                 保安官
 そろそろカルフォルニアも落ち着いてきていた、荒くれ者だのインディアンだのの話はあまり聞かなくなってきていた。
 それはサンフランシスコから近いこの村でも同じだった、テキサスとは違い緑が多く暮らしやすいこの村では。
 男も女も日々を楽しく過ごしていた、そのうえでよく昔の話をした。
「バッファロー=ビルとかな」
「デビー=クロケットもね」
「ワイアット=アープもいたな」
「カラミティ=ジェーンも」
 西部の話になる、彼等のついこの前までの英雄の話だ。
「まだ生きている人もいるけれど」
「もう懐かしいわね」
「過去の話だよ」 
 こうコーヒーを飲みながら話すのだった。
 今は村も随分と落ち着いてきていて家や店も整ってきている、あの西部の木造の粗末な建物はそのままでもかなり綺麗になってきている。
 その中でだ、彼等は村の保安官のグレッグ=オコーネルに言うのだった。
「保安官さんも平和になってよかったって思うだろ」
「もうならず者もインディアンも随分減ったし」
「コヨーテとかもいなくなったしね」
「やっぱりよかったって思いますね」
「ああ、まあね」
 見れば細く鋭い青い目に薄い唇を持っている、くすんだ金髪で顔は日焼けしていて苦みばしった顔つきだ。
 背は高く身体つきは引き締まっている、黒い上着にズボンと厚いブーツ、首元には赤いスカーフがある。
 頭には西部のあの帽子だ、村人達は昼から酒場でバーボンを飲む彼に尋ねて彼もそれに応えるのだった。
「こうして昼からも飲める様になったしね」
「そうだよな、やっぱりね」
「平和が一番だよね」
「畑も普通に耕せるし」
「本当にいい時代になったよ」
「もう怖いものがいなくなったんだよ」
「全くだ、俺もそう思うよ」
 オコーネルもバーボンをちびちびと飲みながら彼等に応える。
「平和で何よりだよ」 
「それでさ、オコーネルさん」
 不意にだ、村人の一人が彼にこう問うてきた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけれど」
「何だい、一体」
「あんたこの村に来て三年だね」
「もうそんなになるか」
「前は何処にいたんだい?」
 問うのは彼の過去のことだった。
「この村に来るまでは」
「まあ色々とな」
 オコーネルは思わせぶりな笑みを浮かべて彼に返した。
「色々とやってたよ」
「色々とかい」
「簡単に言うと流れ者だったんだよ」
 西部には多いそうした人間だったというのだ。
「昔の俺はな」
「流れ者ねえ」
「その場その場で用心棒をやったりカウボーイをやったりさ」
 この辺りも西部だった、とかくアメリカ西部は荒っぽい場所だったのだ。
「オレゴンやテキサスにもいたな」
「で、このカルフォルニアに来たんだね」

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