第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十五 〜南皮〜
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女子だ。だが、少なくとも男女の仲たる関係とは考えた事はない」
「で、では。……わたくしは、どう想いまして?」
そう言いながら、袁紹はずい、と顔を近づけてきた。
「…………」
「正直に、ありのままお答えいただきたいのですわ」
「……そうか、では答えよう。今の貴殿には、少なくとも私が好意を抱く事はない」
「な、何故ですの? わたくしは名家袁家の者、財貨にも事欠きませんわよ」
「それが、私が好意を持てぬ理由だ。私は、外見や家柄、身分で女子を愛そうとは思わぬ」
「……っ!」
「今の私には、仲間であり、麾下でもある者が大勢いてくれる。その者らのうち数名とは、互いの合意の下、契りも交わした」
衝撃を受けたのか、袁紹はふらふらと蹌踉めいた。
「な、何ですって……」
「それは、その者らの性根を、心を愛したが故の事。何ら悔いる事も恥じる事もない」
「……では。わたくしには、それがない、そう仰るのですね?」
「そうだ。もし、貴殿が私に好意を抱いてくれているのであれば、一つだけ言っておく」
「……は、はい」
体勢を立て直すと、袁紹は私に向き合う。
「仮に、今の貴殿の想いを私が受け入れれば、世間は私を何と評すであろうか? 袁家の血筋や財に目が眩んだ……さしずめ、そのような風評が立つであろうな」
「そ、そんな事させませんわ!」
「袁紹殿。煙なき場所に火は立たぬもの。実情はどうあれ、世間がそう見る向きがある限り、私にも貴殿にも、失うものばかりで得るものは少ないのだ」
「…………」
「今少し、ご自身で考えられよ。その上で、貴殿が真に変わられた時、また話を伺うと致す」
それだけを言うと、私は席を立つ。
そのまま、部屋を出た。
振り向きはせぬが、背後から慟哭が聞こえてきた。
翌朝。
「ご主人様、おはようございます」
朝食の席に、愛紗も姿を見せた。
休養を得たせいだろう、顔色が優れているようだ。
「うむ。疲れは取れたか?」
「はい。ご心配をおかけしました」
愛紗は、いい笑顔でそう言った。
「お、お待ち下さい!」
「やかましい、そこをどけってんだよ!」
……と、何やら外が騒がしいようだが。
バタン、と勢いよく戸が開かれた。
「文醜殿。このような早朝から、何用だ?」
「……アンタ、姫を泣かせたな?」
怒りを隠す事もせず、文醜は私に迫る。
「泣かせたつもりはない。袁紹殿が、真の言葉で語る事を求められたので、それに応えたまでだ」
「そうかい。んじゃ、あたいも言わせて貰うぜ?」
そう言って、大剣を抜いた。
「……理由はどうあれ、姫を泣かせたんだ。それは、許せねぇ」
「ほう。文醜殿とやら、貴殿が何をしようとしているのか。おわかりであろうな?」
愛紗が、私
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