第4話 少しだけ暗い洞窟
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「うわぁ……」
洞窟の中はほんのり暗いけれど、壁が少し光っている。歩くのはそれほど難しくない。でも、地面が少しぬかるんでいる。少し動きにくい。
「感慨深いものがあるな……」
サトチーにいさんが呟く。時々する、遠くを見るような眼だ。
「よし! 初めての洞窟探検だ。気張って行くぞ」
「うん。でも魔王って奥にいるの?」
ぼくの言葉にサトチーにいさんが、一瞬キョトンとしてうめく。
「あ? あ、ああ。魔王ね。えーとそこらへんにいるんじゃないか?」
なんだい、それ! サトチーにいさんもっと真面目にやってよ!
「まー、奥に行けばいるんじゃないか……おっ!」
ばさばさって音が上から聞こえた。見上げると、大きなこうもりが赤い目をしたこうもりみたいな奴が、ぼく達をにらみつけていた。
「リュカ、気を付けろ!」
そう言って、サトチーにいさんが木の棒を手に取った。
「ふんぬばらぁ!」
変なおたけびを上げて、サトチーにいさんが突っ込む。けれど、こうもりは天井近くに逃げてしまう。
「ぐぬぬ。高低差なんて聞いてないぞ、責任者か開発者を出せ!」
なんだか結構余裕がありそうだ。いつものよくわからない台詞を呟いている。
こうもりは警戒しているのか中々降りてこない。ジャンプして叩こうとしているサトチーにいさんを見て、ぼくはひとつ思いついた。
「えいっ!」
ぼくが投げたいくつかの石ころのうちひとつが、こうもりに当たった。倒すことは出来なかったけど、ひょろひょろと下に降りてくる。
「ナイス、リュカ!」
それを見逃さず、サトチーにいさんが棒を叩きつける。バシッと音が洞窟内に響く。
ぼくのひざぐらい所まで落ちてきたこうもりを、サトチーにいさんが持っている棒でもう一度叩く。それでようやく、動かなくなった。
「あっ……」
何故か声が出た。
しんっ薄暗い洞窟は静まり返って、サトチーにいさんの少しだけ早い吐息が聞こえる。こうもりはサトチーにいさんの足元。近くに寄って、見る。本当に動かない。
「……」
何だか、ぼくは、怖くなった。
よく分からないけれど、もやもやした。
言葉にしようとして、何と言っていいか分からない気持ちになって、やっぱり口からは出なかった。
でも、良い気分じゃないのは確かだった。
「ぜえ、はあ……ふう。何とかなったな。よし、行くかリュカ」
そう言ってサトチーにいさんがぼくの方に振り返る。うん、って言おうとして、何故か言えなくて。何を言えばよいのか分からなくなって、とりあえず頷いた。
「……それじゃあ行くか」
そう言った時、サトチーにいさんはもうこっちを
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