第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十四 〜袁本初〜
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「ま、こんな貧相な身体つきじゃ、高くは売れねーけど、仕方ないだろ。おい、野郎共」
「へい!」
兵の中でも、一層むさ苦しい格好の者が二人、荀ケの両側に着いた。
「ちょ、ちょっと、近寄らないでよっ!」
「うるせぇ!」
「へっへっへ、大人しくするんだな!」
「い、いやぁぁぁぁぁぁ!」
そのまま、何平の指揮の下、魏郡まで連れて行き、領内の外れで解放させた。
近くを大規模な商隊が通る事を見越して、である。
無論、私は同行出来なかったのだが、
「縄を解いたのに、暫くは身動きしてなかったぜ? 『男が怖い男が怖い……』ってブツブツ呟きながらさ」
律儀にも、最後まで付き合った挙げ句に戻ってきた何平が、そう報告してきた。
尤も、その時は私もまた、ギョウに戻っていたのだが。
「お兄さんも、なかなかえげつないですねー」
「でも、自業自得ですしね。少しは懲りたでしょう」
些かやり過ぎたかと思っていたが、風だけでなく愛里までこの調子であった。
余程、私を罵倒した事が、腹に据えかねているようだ。
「何平、ご苦労であった。少ないが、報酬を受け取るが良い」
自身の手持ちから、幾許かの金を何平に手渡した。
「え? いいのか?」
「ただ働きをさせるつもりはない。それだけの働きをしたのだからな」
「そうか。なら、いただいておくぜ、へへ、じゃあな」
「うむ」
「……本当に良かったのですか? 鈴々ちゃんと渡り合った腕前といい、機転といい、惜しいと思うんですが」
去って行く何平を見送りながら、愛里が言う。
「だが、本人が仕官を望まぬのだ。無理強いをしても仕方あるまい」
「……はい」
あれだけの人物、野にあっても存在感を示すであろう。
ふっ、いずれまた何処かで会うやも知れぬな。
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