第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十四 〜袁本初〜
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は誤解せぬようにな」
「あたしは学がないからよくわかんないけどさ。……ただ、アンタが嘘をつくような奴じゃないって事ぐらい、わかるさ」
そう言って、何平は笑った。
「さて、じゃああたしは先に寝てもいいかな? 柄にもない場所に出たんで、疲れちまった」
「構わぬ。どのみち、我らはまだ話す事がある」
「わかったよ。じゃ、おやすみ」
手をひらひらと振りながら、何平は出て行った。
「気を遣ったんでしょうかねー」
「そうかも知れませんね。何平さん、ただの棄民じゃないみたいですね」
あの少女が、真に王平ならば、このまま埋もれてしまう事もあるまい。
そして、話題は袁紹の州牧の事へと移る。
「袁紹さんに影で助言していたのは、あの荀ケという者で間違いなさそうですね」
「それにしては、あんまり軍師として役立っているようには見えませんでしたけどねー」
「その通りだな。恐らく、才はかなりの物を持っているのであろうが、あのように思考が偏っていては、な」
その点、稟や風、愛里、嵐(沮授)、元皓(田豊)は皆、視野が広く、物事を公平に見る。
軍師に限らぬ事ではあるが、視野を狭める事は人物を狭量にするだけ。
理由はわからぬが、荀ケのようにただ男嫌いというだけで、それを露わにするのでは働き場もあるまい。
少なくとも、私が袁紹であれば用いるべき人材にはならぬ。
「お兄さん。あの荀ケちゃんの事も、ご存じではなかったのですか?」
「……いや。私が知る荀ケは、少なくとも、あのような人物ではない。『王佐の才』と呼ばれる程の才を持つ者なのだが」
実際、私が知るのは、曹操の覇業に多大な貢献をしたという事。
この世界の華琳が果たして、あのような偏見に満ちた人材を用いるかどうかはわからぬが、少なくともあのまま、袁紹の下にいるとは考えにくいな。
そう思っていると、不意に外が騒がしくなった。
「何かあったんでしょうか?」
「兵士さん達が、走り回っているようですねー」
考えられるとすれば敵襲だが、賊の類が兵の居る事が明確な城を攻めるとは考えにくい。
漢王朝は斜陽とは申せ、群雄割拠にまでは至っておらぬ以上、私闘もあるまい。
「土方様。顔良様がお見えです」
そこに、同行している兵士が、取り次ぎに現れた。
「よし、通せ」
「はっ」
入れ替わりに、やや慌てた様子の顔良が、入ってきた。
「申し訳ありません、夜分に」
「いや。火急の用件とみたが、何事か?」
「は、はい。実は、荀ケさんをご存じないかと思いまして」
私は、愛里や風と顔を見合わせた。
「いや。そもそも、先ほどの様子では私と顔を合わせる事すら望まぬであろう」
「そうですよね……。はぁ、もうどこ行っちゃったんだろう……」
がっくりと肩を落とす顔良。
「もしかして
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