第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十四 〜袁本初〜
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も、初対面の私がここまで嫌われる理由がわからぬ。
「荀ケさん! 貴女、わたくしの命が聞けないのですか!」
「袁紹様。私は男などと一言たりとも話すつもりはありません。ですから、お断りします」
とりつく島もない、と言った風情の荀ケ。
袁紹は怒りで身体を震わせていて、顔良はこめかみを押さえている。
「荀ケとやら。性別だけで差別するとは……それでも貴様、軍師か?」
「な……」
私の言葉に、ギョッとしたように顔を上げた。
軍師、という言葉に反応したのであろう。
が、すぐに憎々しげな顔に戻る。
「話しかけないでよ! 男なんかに話しかけられたら、妊娠しちゃうわ! この全身精液男!」
「ほう。風、私が女子に話しかけると、それだけで子が授かるそうだが」
「だったら、今頃魏郡は子供だらけですねー。確かにお兄さんの子だったら、風は本望ですけど」
……最後の一言は余計だ。
「な、なんて事よ! やっぱり男は厭らしいわ! これ以上話しかけないで、息もしないで!」
荀ケほどの人物なら、もっと筋道の立った話をするかと思っていたのだが。
これではただの暴論、思い込みと偏見だけで話をする愚物ではないか。
「……袁紹殿。拙者を侮辱するおつもりか?」
「そ、そんなつもりはありませんわ。荀ケさん、席をお外しなさい」
「袁紹様! このような汚らわしい男の言葉を聞き入れるのですか?」
「お、お黙りなさい! 斗誌さん、連れ出しなさい!」
「え、ええ! 私ですか?」
いきなり話を振られた顔良は、困惑するばかりだ。
「そうですわ! 早くなさい!」
「で、ですが……」
どうした訳か、顔良は動こうとしない。
「……貴様。武士への侮辱、覚悟あっての事であろうな?」
私は、兼定に手をかける。
「ま、まさか、城中、しかも袁紹様の御前で剣を抜く気?」
流石に顔は青ざめてはいるが、それでもまだ、気丈に私を睨む荀ケ。
「な、何してるんですか! 土方さんを止めて下さい!」
漸く、呪縛から解けたのか、顔良が慌てて駆け寄ってきた。
「邪魔をするな。非がどちらにあるか、問うまでもあるまい?」
「で、でも……」
愛里と風が、顔良との間に立つ。
「謂われなく、我が主が辱めを受けているのです。お仕えする者として、邪魔はさせません」
「お兄さんが恨まれる筋合いがないのもありますが、それ以前に場を弁えない時点で、この場にいる資格はないのですよ。何故、袁紹さんのご指示通り、連れ出されないのでしょうかねー?」
「そ、それは……」
顔良はまだ、良識がある者と見ていたが。
私の、思い違いであろうか?
……ともあれ、あの小娘を黙らせねばならんな。
荀ケに視線を戻した私は、そのまま睨み返した。
これでも、
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