第二十話 返しすぎだ、馬鹿野郎!
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「……」
ミュラーが俺の顔を見ている。
「まさかとは思いますが……」
「この一件に絡んでいると?」
「装甲擲弾兵総監は総参謀長の事もリューネブルク中将の事も好んではいません」
「……」
「今後、総参謀長が戦場に出続ければリューネブルク中将も戦場に出る事になる。当然武勲を上げるでしょう、昇進もする。自分の競争相手になる、そう思ったとしたら……」
「……或いはそう囁いた人物がいるか」
「はい」
「そのこともキスリングには伝えておけ」
「はい」
厄介な事になった。何処を見ても敵だらけだ。そして帝国の状況は僅か五日の間に驚くほど不安定になってしまった。前回の戦い以来平民達の間には貴族に対する大きな不満がくすぶっている。そんな時に今回の事件が起きた。ベーネミュンデ侯爵夫人の馬鹿げた嫉妬から総参謀長が重傷を負った。多くの平民達が皇帝に対して寵姫一人抑えられずに平民出身の総参謀長を危険な目に遭わせた愚か者、そう思っている。
そしてイゼルローン要塞が陥落した。総参謀長が無事だったら防げた可能性は十分に有った。今はまだ軍の一部、グリンメルスハウゼン元帥府でのみ囁かれているがいずれは皆が知ることになるだろう。そうなれば帝国の安全保障そのものに大きな損害を与えたと非難されることになるのは必定だ。
国務尚書がどう出るか……、全てが国務尚書にとっては裏目に出た。当然だが何らかの手で平民達の不満を払拭しようと図るはずだ。当然だがこちらを利用しようとするに違いない。一体どんな手を使ってくるのか……、帝国の内も外も敵ばかりだ、厄介な事になった……。
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