第二十話 返しすぎだ、馬鹿野郎!
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隊の編成が急務になるな。どうにかしないと、それなのに俺は動けない……。
「その責任を取ってミュッケンベルガー元帥が辞任しました」
「……後任は?」
「グリンメルスハウゼン元帥です」
溜息が出た。そんな俺をクレメンツとミュラーが辛そうな表情で見ている。溜息も自由に出来なくなったか……。
「ところでリューネブルク中将は如何しました?」
俺の問い掛けにクレメンツとミュラーがヴァレリーを見た。ヴァレリーは俯いている。
「話していないのか、中佐」
「申し訳ありません、ミュラー提督」
まさかな、確かに酷い衝撃だったが衝突事故だ、死ぬなんて事は無い筈だ。
「どういう事です、彼は何処にいるのです?」
「……リューネブルク中将は死にました」
クレメンツが俺に答えた。
「馬鹿な、所詮は衝突事故でしょう。私だって生きている」
「それだけでは有りません。衝突の後、動かなくなった地上車に連中は銃撃を加えたのです。後から付いて来た護衛が直ぐに連中を追い払ったので僅かな時間でしたが……」
「……」
気付かなかった、いや俺には記憶が無い。失神していたからか……。
「リューネブルク中将自身、衝突の衝撃で足を骨折していました。外に出て敵を追い払うことは出来なかった。それでとっさに閣下を庇って……。その御蔭で閣下は奇跡的に無傷だったのです」
「馬鹿な……」
馬鹿野郎、リューネブルクの大馬鹿野郎。大方借りがあるとか詰まらない事を考えていたんだろう。返し過ぎだ、その所為で今度は俺の方が借りを作ってしまった。それなのにどうやって返せばいいのか俺にはさっぱり分からん。どうして皆俺が困るような事ばかりするのか、リューネブルクの大馬鹿野郎!
帝国暦 487年 5月 18日 オーディン 帝国軍中央病院 アルベルト・クレメンツ
部屋を辞去して廊下を歩いていると沈痛な表情でミュラーが話しかけてきた。
「平静を装っていましたが総参謀長にはかなりのショックだったようです」
「そうだな」
フィッツシモンズ中佐は病室に泊まってゆく。今夜は彼を一人にしない方が良いだろう。
「ミュラー、例の侯爵夫人の一件、キスリング中佐に報せておけ。閣下の疑念の真実を確認させるんだ」
「宜しいのですか? 総参謀長は今は動けないと言っていましたが」
「このままでは真実が闇に埋もれかねん。極秘にだぞ、卿がキスリング中佐に話す事も彼がその真実を確認する事も、誰にも知られてはいかん」
「はい」
暫く歩くとまたミュラーが話しかけてきた。
「オフレッサー装甲擲弾兵総監の事、お聞きになりましたか?」
「いや、何かあったか」
「リューネブルク中将の装甲擲弾兵第二十一師団を自分の子飼いの部下に与えたようです。軍務尚書に直に頼んだとか」
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