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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
外伝
外伝1:フェイト編
第8話:研究所にて
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の顔を見つめた。
そして、ふと我に返り慌てて手を振った。

「そんなのいいですよ。 それにヒルベルトさんが言ったことは事実ですしね」

「許してくれるのか?」

「許すもなにもないですよ」

ゲオルグはそう言ってヒルベルトに向かって笑いかけ、その手を差し出した。
今度はヒルベルトが面食らい、ぼんやりとその手を見つめていた。

「握手しましょうよ」

ゲオルグが声をかけると、ヒルベルトの目に光が戻る。
ヒルベルトはゆっくりとゲオルグの手を握った。





同じころ、ミッドチルダにある管理局のビルの一つの中で、
一人の男が通信を介してある男と向かい合っていた。
彼は、画面の中の男の不遜な態度にいら立っていた。
そのいら立ちを現すように彼はその両手で自らが座る椅子の肘かけを
固く握りしめていた。

「お前に預けていた研究施設が破壊されたそうだな?」

彼は厳しい口調で画面の中の男に問いかけた。
その声は多くの局員を震え上がらせてきたものだ。
だが、画面の中の男は彼の声をなんとも思わないようであった。

『ええ。 ですが必要なデータは得られましたよ、閣下。
 計画は次のステップに進められます。まったく問題ありません』

男は画面の中で不敵な笑みを浮かべる。
青白く、頬のこけたその顔はどこか病的なものを感じさせた。

「そのために優秀な研究者を何人も犠牲にしたんだぞ」

低く抑えられた彼の声には明確な怒りが込められていた。

『必要な犠牲ですよ。 その覚悟もなくこんなことに手を染めておられたので?』

彼の怒りを知ってか知らずか、男はその華奢な肩をすくめる。

「私には必要とは思えんがな。 お前の言う成果とやらが
 暴走して暴れまわった結果ではないか」

『そんなに簡単に成功するようなら研究の必要はないでしょうね』

男は彼に向かって嘲るような笑みを向ける。

「しかも、本局の介入を許すとはな」

彼の眉間には深いしわが刻まれる。
その眼には憤怒の炎が宿っていた。

『それは閣下の用意された研究者たちが救難を求めたからですよ。
 私のせいにされても困りますね』

「もういい」

彼が追い払うように手を振ると、男は深々と一礼して通信を切った。
静寂に包まれた部屋で、彼は椅子の背にもたれかかるようにして
大きなため息をついた。

「奴にこのまま好きにさせておいてよろしいのですか?
 閣下の身の安全に関わると思うのですが」

部屋の片隅に控えていた彼の副官が1杯の紅茶を机に置きながら尋ねる。
副官の言葉に彼は再び深いため息をついた。

「よくはない。 だが計画を放棄するわけにもいくまい」

彼は先ほどまでとは打って変わって
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