第四十六話 狂瀾を既倒に廻らす
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放たれた凶弾は運命を狂わせる――――――
ジブリールは何故自分の視界が歪み重力に惹かれるように落ちていくのか理解できなかった。地面にぶつかる自分の姿と周りに溢れていく赤い液体―――血が自分の服を染め上げる。音に驚いて飛び跳ね距離を取っていたジブリールの猫が近づき、顔を覗き込んだ所でジブリールは息絶えることとなった。
「流石に慣れないようなことをするものではないな……」
ジブリールを撃ち殺した張本人であるブルーノ・アズラエルはそう呟く。単純な話、彼がこのような凶行に出たのは例の諜報部に唆されたからだ。ジブリールは自分を駒として使い捨てる気だと。だからこそ、彼の持つ情報を得たなら始末をするべきだと。事実、ジブリールは彼を駒として見ていた為にその判断は間違っていないとは言えない。
そして結果、実に彼は良いように踊らされた。護衛の人間をジブリール側ではない人間にし、オーブに来てから策を施したりと、彼の行動は以前の彼を知っている人がいたなら、まるで別人のようだと思える程に積極的に動いていた。
「それで、NダガーN隊は用意が完了したのだな?」
そう尋ねるアズラエルに護衛の兵士は首を縦に振る。
「よし、シャトルに乗り込むぞ。早い所脱出せねばオーブが先に落ちてしまう。そうなっては我々には逃げ場はないのだからな」
そう言ってアズラエルはジブリールの遺体とその猫を放置したままシャトルへと向かっていった。
◇
『クッ、これほどのパイロットだとは……!』
キサカは目の前で相対する敵に思わずうなり声を上げてしまう。敵の改造されている薄紫のゲルググは、こちらの最新鋭機であるリゼルを持ってしてもまともに戦うには厳しい相手だった。まるでこちらの動きを読んでいるかのように動き、そして攻撃を確実に当ててくる。正直言って成すすべがないとすら思えた。
「フッ、これで終わりだナチュラル」
ナギナタによって腕を切り裂かれ、距離を取った際にビームバズーカを正面に構えられる。完全に躱すことが出来るような位置ではない―――詰みだ。
『カガリ―――すまん。どうやら先に逝くことになるようだ……』
キサカは最後まで諦める気はなかったが、最早無理だろうとも思っていた。それほどまでに明確な実力差が見て取れる。そうしてビームバズーカが放たれようとした直前、ゲルググは突然構えを解き、後ろに下がった。そして、それと同時に横合いからビームがすり抜ける。
「来るとは思っていた……正直、そんな感覚に頼るのは自分でもナンセンスだとは思うがなァッ!」
放たれる直前だったビームバズーカをビームが襲ってきた方向に向けて撃つ。その先に居たのは―――
『誰も討たせない―――それが、僕の覚悟だから!』
「フリーダムッ!!」
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