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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の1:圧倒
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いく。彼らが攻撃を食らうのは龍が自暴自棄になった時、つまり龍が半ばあきらめた時だけなのだろうか。
 『否、そんな事は無い』と龍は己を励ます。自分は古より偉大な魔術士に可能性を感じ、自ら翼を畳んだ先見の生物である。ただ一時の苦境だけを以て諦観に心を委ねる事はありえない。機が来れば必ずや、残し僅か数体となっている傀儡を葬ってくれよう。そしてあの生意気な老人を食らい、狂王の再誕を祝福してーーー。

「偉大なる古の龍よ。あなたの戦いぶりはまさしく圧巻の極み。敵ながらまこと天晴である。而して、私は些か失望の念を抱いている」

 突如、背後から振りかかった声に羽根がぴくりと震える。言葉に反応してか、傀儡たちが一斉に攻撃の手を止めた。龍は疲労で身をぶるりと震わせながら首だけで背後を見る。

 ーーー突然何を言い出す。この人間は。

 龍の背後、宮殿に続く旧大通りの真ん中に、一人の屈強な傀儡が立っていた。まるで道端のゴミを見るかのような視線で、その者は淡々と告げる。

「あなたの活躍ぶりは私たち人間も、歴史の書物や、村人たちの口伝によって長く教えられており、それに畏怖したものだ。悪さをすればサー=ドリンは空を飛んで現れて、哀れで卑しい者達を食らってしまうだろう。そう信じ込まされて育って来た。
 しかし現実を見るに、あなたは伝承にあったような行為は一切しない。火を吹いたりせず、翼だけで大嵐を起こしたりもせず、咆哮で雷鳴を呼んだりもしない。ただ自分自身の力のみを信じて物理的な手段に訴えでている。まるで野生のイノシシとなんらかわらぬ、野蛮さに満ちた行為だ」

 ーーーだまれ。

 怒りの篭った息を漏らす。龍は次に何が言われるかに察しがつき、轟々とした怒りを抱いていく。先程まで、魔術で言いようにされていた時とは比べようにもならぬ怒りであった。自らの存在意義、或は矜持の根底を揺るがしかねないものを、傀儡は実に淡々とした口調で続けていく。

「あなたは本当に龍属なのか?魔術学校の教授程度の魔力を誇る、卑しい存在なのか?」

 ーーーその口を閉ざせ。

「もしやあなたは龍属の中で・・・」

 『最弱の存在だから、狂王に屈したのではないか?』。
 最後まで呟かれたそれに、龍はついに激発する。天地を分け隔てるような大きな蛮声に大気がぶるぶると震えた。今まで聞いたものでも最大限のそれに、感情無き傀儡は吹き荒れる魔力の流れに目を細めた。人間の高位魔術士と比較しても、龍の魔力はかなりのものであると実感できた。
 龍の身体から溢れ出たそれは鎧のように傷だらけの身体を覆っていき、さらには失われた筈の片翼が青白い光によって再形成されていく。翼越しに空に広がる曇天が透けて見えていた。龍は両翼を鷹揚に羽ばたかせ、その巨体を数メートルほど上昇させる。膨大な魔
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