第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十三 〜棄民〜
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
無用な権力争いは好むところではないが、彼が動けば全て、妹である何太后と、弁皇子の為、と取られてしまう。
本人にそのつもりがなくとも、宦官らはそのように見せようと暗躍するだけであろう。
「それに、陛下はお加減が優れぬようだ。確たる後継も定まらぬ中だ、まさに今月が赴けば、火中の栗を拾うようなものだ」
「ですが、勅許を覆すなど不可能です」
「何進さんのお気持ちもわかりますが、風達でもいい知恵は浮かばないのですよ」
月には詠がついているが、やはり同じであろう。
それに、決断するのは月本人。
苦悩の様は記されているが、最後には受諾するしかあるまい。
それは、何進もわかっているのであろうが、一縷の望みを託して、このような書簡を送ってきたという事であろう。
「……一度、月に会っておく必要があるな」
「でもお兄さん、此処から并州は遠すぎますね。それに、お兄さんが長期にギョウを離れるのは好ましくありませんよ?」
「わかっておる」
「それに、袁紹殿がその間に動きを見せる可能性もあります。月殿には申し訳ありませんが、我らはそちらを優先せざるを得ません」
「……何とも、歯痒い事だな」
やはり、連合軍結成は避け得ぬ運命なのであろうか。
……些か、暗澹たる思いを禁じ得ぬ。
翌日。
渤海郡より、嵐(沮授)と星が帰還した。
「二人とも、ご苦労であった」
「本当だよ、全く。疲れるったらありゃしない」
「おや、書簡と睨み合いから解放されて楽だ、と言っていたのは何処の誰だったかな?」
「せ、星! 余計な事バラすんじゃない!」
気ままな二人、ウマが合うようだな。
珍しく狼狽する嵐に、場に笑いが広がる。
「さて、では報告を聞こう」
「あ、そ、そうだった」
嵐は居住まいを正した。
「まず、袁紹は州牧を狙う事を隠す素振りは全くないね。それどころか、堂々と宣言されたぐらいだよ」
「主が、その折には傘下に入る事も、信じて疑わぬようでしたな」
その話ならば、あれだけはっきりと拒絶した筈なのだがな。
案の定、皆が呆れている。
「懲りない御仁ですね」
「全くです。ご主人様を何だと思っているのだ」
「それは、今更とやかく申すまい。嵐、続けよ」
「はいはい。どうも、その事ばかりに注力しているみたいで、渤海の復興は殆ど手つかずって印象だったな。城自体は、かなり手を加えている最中だったようだけど」
「嵐、それは防備を固めている、という事か?」
「それも少しは見られたよ、彩(張コウ)さん。けど、袁紹が指示したってより、顔良あたりが自発的にやっているって感じだったけどさ」
「兵の装備は確かに充実していたように見えましたな。ただ、練度は今一つ、白蓮殿の軍にも見劣りするでしょう」
「星ちゃん、さらっと酷い事言いますねー
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ