例えばこんな初恋の行方は認めたくなかったのに
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
7月7日 人生最低の日
生命維持装置にその身を任せる一人の少年。心音図が一定のリズムで電子音を放ち続ける。顔色は良いとは言えず、その体には激しい裂傷が包帯の下に隠されている。いまも怪我による発熱で額には脂汗が滲んでいる。その額に保冷剤を内部に入れたタオルをそっと置く。
傷の具合は深刻だ。肉体のダメージは辛うじて致命傷には至らなかったが、逆を言えば致命傷を免れたというだけであり命の危険があることに変わりはない。
あの時、戦闘区域に入り込んでいた密漁船を発見した一夏は船を庇ってエネルギーシールドをすべて使い切った。そして密猟者を助けようと船を戦闘区域外に誘導した私を庇って、見るも無残なひどい傷を負った。
あの時の私は間違えただろうか?
紅椿の性能を信じて独りで福音へもう一度挑めばよかっただろうか?
それとも船を完全に見捨てて一夏を庇うことに専念すれば?
将又、もっと早くゴエモンに助けを求めていれば?
そもそもこの作戦に無理があると最初から拒否していれば?
私が紅椿など受け取らなければ・・・?
全ては仮定でしかない。そして仮定は現実には決してならない。それは既に起こってしまったことであり、今更考えるのは無意味だ。ただ、一夏は私が彼らを区域外へ誘導すると言った時、ただ一言「まかせた」と言った。あのお人よしの事だ、結局何をしても船は守ろうとしただろう。
その人の良さが、私の心をどうしようもなく苦しめるのだ。
心臓だけが極寒の吹雪に晒されたように締め付けられるのだ。
見えない誰かに首を絞められたかのように喉を圧迫するのだ。
= = =
「で、アンタいつまでそうしてる訳?」
ふと気が付いたら後ろから聞き覚えのある声がした。振り向くまでもなく鈴音だと分かった箒は、返事も返さず海を眺め続けている。振り向く気は起きなかった。振り返った先にいる呆れ返った彼女の顔を幻視出来た。
いつまで、か・・・
「分からない」
「・・・今時小学生でももう少しマシな返事を返すわよ」
「そう、だな。今の私はまるで子供のようだ」
自分の意志を持って生きているつもりだった。自分の感じ、思っていることが本当で、勘違いはあっても間違いはないものと考えて生きてきた。だが、それは自分で思ってた以上に不確かであやふやなものだった。
「何よそれ。私落ち込んでますアピール?そんなことしたって・・・」
「分かっている。こんなことをしても一夏の意識は戻らないし福音も止まらない」
「そうね。それもこれもアンタとあの馬鹿のせいよ」
ふぅ、とあきれるように溜息を吐く鈴音。彼女が何をしにここへ来たかは何となく想像がつく。きっと無断出撃して福音を止める気だろう。おそらく自分以外の専用機持ちも皆参加するのだろう。だが、箒は
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ