始まり
第03話 嫌な記憶
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…もう一つの両親みたいな感じだったな」
「わかりますわ。あの方々の優しさは今でも残ってますもの」
ユーベルーナに同意するように全員が思い出に浸り、頷いた。
「そうか、やはりお前達もそう思うか。なあ、知っていたか? 秋人家族は一時期猫又の姉妹を保護していたりしていたんだぞ?」
ライザーも以前なら浮かべることのないような無邪気な笑みを浮かべた。
「っと、すまん、逸れたな。そんな風に悪魔のみならず、妖怪や他の種族達とも友好な付き合いがあったんだ」
だが、と続けると、先程まで浮かべていた笑みは消え失せ、気付けば拳を強く握りしめていた。
「他種族とのそんな関係を持っている家族を良く思わない輩がいやがった。教会のエクソシストだ。奴らはある日突然襲い、まだ幼かった秋人の目の前で春彦殿と夏妃殿を殺した」
「ッ、じゃ、じゃあアキトはまさか……っ」
「ああ、恐らく当時のその光景を見ているんだろ」
これを初めて聞いた年少組は驚き、きっかけを作ってしまったミィとニィは秋人に対する申し訳なさで一杯になった。
そんな面々を目にして、少し間を置きライザーは続けた。
「俺達が秋人達の元に駆け付けた頃には全てが終わっていた。最悪の状況を想像してたがそれは違った。そこで俺たちが見たのは、血を浴び、ただ呆然と立ち尽くす秋人の姿だった。そんな秋人の足もとには、血の海を広げながら地に倒れるエクソシストども。俺たちは秋人に呼びかけた。だが、両親が殺されたショックが大きかったせいか反応はなかった。やっと帰ってきた反応は……まったく感情のこもってない、暗い笑みだけだ。ゾッとした。憎しみも悲しみも何もない、本当に空っぽな、ただ形だけの笑みを浮かべる秋人に俺は恐怖した」
ライザーの脳裏にはその表情が消えることなく残っている。
「結局、直後に秋人は気を失って、俺達が真実を知ったのは目が覚めてからだった。俺達が原因で秋人たちが襲われ、春彦殿と夏妃殿が殺されてしまったこと。これには父上も母上も秋人に頭を下げるしかなかった。それに秋人は何も言わず、憎むことも責めることなく、事実として両親の死を受け入れた」
当時のことを知る年長組はライザー同様に顔を悔しそうに歪めている。
「秋人が教会の者を憎む原因となったエクソシストどもを殺したこと。幸か不幸か……両親の死を前にして秋人に眠っていた才能と神器が目覚めてしまった。魔法の才と神器『八雲立つ紫』。それらを無意識に行使していた」
ライザーが年少組に向けた顔はどこか悲しみに染まっていた。
「今の状態まで落ち着かせるのに数年全員で努力し、そのあとはお前たちの知っての通りだ。これがあいつの中で残っているものだ。―――これがお前たちに言わずにしてきた
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